第2話


ユミとは高校時代からの付き合いだ。ユミの親友が彩音だった。



―――遡ること11年前



その頃の俺は通っていた高校で浮きまくっていた存在だった。所謂いわゆる札付きのワルってヤツで、けれど子分を引き連れるなんてかっこ悪いことはしない。



俺は常に一匹狼。



体裁とかではなく、一人の方が楽と言うのが大半の理由。



その日は期末試験が終わって答案用紙が返ってきた。現国、数学、化学、日本史、英語、全てが赤点だった。



「自己最高記録?」と皮肉りながら屋上で寝転びながらタバコを吹かして答案用紙を眺めていた。



その日は風が強かった。俺の答案用紙が俺の手を離れていったのが分かったが追いかける気もなれずそのままにしていたら



「ぶっ」



と女子の声を聞いた。誰だぁ?と言う意味で顔だけ持ち上げると、風に煽られた答案用紙を顔に貼りつけた女が突っ立っていて、どうやらその答案用紙の一枚がその女の顔を直撃したようだ。



女は鬱陶しそうにその紙を手で取りあげると



「数学、12点!?ってどうしたらこんな点数取れるの。ある意味才能だよね」



と言った顔に覚えがあった。確か隣のクラスの女で苗字を何と言ったか忘れたが、とにかく野郎どもが「あいつマジ可愛い!」と騒いでいたから覚えている。



しかも家も大金持ちのお嬢様で頭脳明晰だとのこと。だけど本人はそれを笠に着ることなくサバけた性格で、それらを伴ったその女は男女ともに人気があった。



確かに可愛い、とは思う。



女は足元に散らばった俺の答案用紙を一枚一枚かき集めて「数学12点に、化学24点……古典文学に関しては0点じゃん!始めて見たよ」



と何故か感心。てか感心する所か?その前に俺の喫煙を咎めろよ。



変な女。




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