第4話

おやじの顔がぱっと輝き、身を乗り出す勢いで叫んだ。


「ハリスの旦那ー!」

「えっ?!」


若者二人も同時に男に顔を向ける。



大鎌の後ろに黒いローブを目深に被った男が突っ立っていた。



「ハリスって‥、死神ハリス?」

「閻魔大王の魂を狩った‥あのっ、伝説の死神ハリス?!」


屋台のおやじの言葉に興奮した見習いの死神達が、目をキラキラさせて男を見つめる。


明らかに仄暗い雰囲気を纏う男―。


見習いの死神が背負っている明らかに小ぶりな鎌とは違い、屋台に突き刺さっている彼の鎌が、通常の鎌よりもひと回り大きい事も一つの判断材料となっているのか。


顔をゆっくりと上げた男は

明らかに照れた体で、にへら〜と気持ち悪い笑みを浮かべた。



死神ハリスは褒められることに慣れていない。



「…」


数秒間の沈黙の後、


「あ、別人だ。行こーぜ!」


見習いの死神はハリスに背を向けて隣にいる仲間の横を通りスタスタ歩き出す。


「おいっ!違うのかよ!」


追いかけるもう一人の見習い。

その見習いの肩を強引に引き寄せた見習いの死神は小声になる。


「あんな気持ち悪い奴が伝説の死神ハリスなわけねーだろ!」

「…た、確かに」



振り向きもせず、屋台を後にする若者達の態度に、ハリスは深く傷付いた。


ぐすん…。



ハリスは鼻を啜り背中を丸くして屋台の丸椅子に座る。


「おやじ、具なしで」

「あいよ!」

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