第30話

「なにも。少しの間だけだが、一緒に暮らすし、端っこでいいから私の存在を許してもらえるくらいの仲でいたいとは思っている」



 言い終えてからハンバーガーにかぶりつく。さっきより味がする。


 青い目は選別してるかのような雰囲気で、私を見ていた。しかし、その目は直ぐに私から逸らされ、溜息を零した。



「変な奴」



 さっきよりもずっと親しみやすい雰囲気の顔になっていて、少しドキリとしてしまう。



「私はいたって普通だ」


「あんた、あんまり女らしくない話し方するよねー」


「そうか? 別に普通だと思うんだが」


「ほら、そういうの。……まあこっちとしては男と接してるみたいで気が楽だし、いいけど」



 それは褒めてるのだろうか……。いや、褒めてくれているんだと思いたい。


 ぽつぽつと、テンポ良くとまではいかないが、会話を挟みながら食べ進めた。



 フライドポテトも美味しいな、少ししょっぱいけど。カリカリしたやつを選んでぽいぽい口の中に入れていくと慎が「カリカリのポテトそんなに好きなの?」と呆れた顔で聞いてきた。うん、と頷けば「ふーん」とだけ。


 そんな簡単なやりとりしかしていない。でも、嫌な顔をされることはない。私の存在を認めてくれたのかな、彼の心情はよくわからない。



 緊張感が薄れていく中、すっかりハンバーガーたちは胃袋に収められた。


 セット一つあればお腹はだいぶ満たされ、満腹感に浸りながら残った飲み物をストローで喉に流し込んでいるとテーブル側が片付けをしているのに気づく。紙ゴミ、私も渡そう。


 と、琳がこちらに視線を向けながらチビワ……空に何か話している。するとハンバーガーなどが入っていた紙袋を持ってこちらまで歩いてきた。顔はものすごく不服そうというか、嫌々というか、そんな顔だが。



「ほら、ゴミ入れろ」


「どうも」



 ぽいぽいとゴミを入れていけばすぐさま私から離れた。私はバイ菌か。


 慎も同様にゴミを入れていき「ゴミ回収ご苦労さま。これもあげる」と飲み終わったジュースの容器を空の頭に置く。氷が残っているのかざらっと音が鳴っていた。



「慎てめ」


「なーにー?」


「……」



 慎の静かな圧力に空は黙り込んだ。私はなんとも言えぬ顔でジュースをストローで吸い口の中に流し込む。


 空はゴミの入った紙袋を小脇に抱えるとそっと頭に置かれた容器を手に取り、とててと琳たちのいる方へ小走りしていった。なんだか少し可哀想な気もする。



 慎はかなり扱いが雑だ。それくらい仲が良い証なのかもしれないが、ぼっち歴が長い私には動揺してしまう。



 ……そんなわけで、昼食タイムはあっという間に終了したのだ。

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