第29話

ダイニングテーブル席の方で



「あの慎が気遣いを……? あれ偽物?」


「知ってるぜ俺、ドッペルゲンガーって言うんだろ?」


「空、そんなこと言ったらダメだよ。慎にだって人の心くらいあるんだから。あーもうポテト落としてるよ気をつけて」


「……」


「ナツキ〜無言で空が落としたポテト回収しないの〜」


「……もぐ……落とした方が悪い……もぐ」



 という会話が繰り広げられているのを慎はじろりと睨んでおり私がヒュッと身を縮こませる羽目になった。


 お互いに座って、ハンバーガーの包装紙をめくり半分ほど顔を出した状態にするとかぶりつく。



 ……変に緊張しているせいかハンバーガーの味がしない、気がする。ジャンクフード負けるな。ケチャップや肉、あとチーズの濃い匂いからかろうじて味を感じてるようなものだった。


 無言でいるのも辛いし、当たり障りない会話をしよう。とりあえず、一番目につく髪色とかから。コミュニケーション能力は働かせるぞ。



「……慎は髪の毛、染めたのか? 目はカラコン?」


「髪は染めたからこの色だけど目は生まれつき。俺、クォーターなんだけどあっちの人の血が濃いっぽい」


「そうなのか。すごいな、生まれつき青い目だなんて。銀髪もよく似合ってるから違和感全然ない」




 純粋にすごいと思った。本当にいるんだな、青い目の日本人。



 会話が途切れかけたから次にどんな話題にしようか————と考えた時だ。




「で、そんな風に俺を褒めてどうしたいの?」




 慎からそんな言葉が投げられて、ハンバーガーを食べることが止まった。青い目が、私を捉えている。


 言葉の真意が掴めなかった。だってどうもしたいと思っていない。思ったことを口に出していただけだから。



 本当に、彼は、接しずらいというか……なんて返せばいいのか、少し悩む。



 対人関係を上手く積んでこれなかったことがここにきて足枷となっている。



 いや、頑張れ私。負けるな私。こんなこと、弥生からのストレス発散を向けられるより簡単な問題だろ。

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