第28話

共有スペースに三人で入ると、私たち以外の四人がダイニングテーブルにハンバーガーやポテト、チキンナゲットを広げ、椅子に座って仲良く頬張っていた。


 まず私たちに気づいた時雨さんはなぜか目を真ん丸くして驚いていた。



「……後で食べるとか言って部屋にこもるかと思ってたぞ、慎」


「来ちゃ悪い?」


「悪かねーよ、驚いただけだ」



 慎の嫌味に対して軽く流し、なぜか安堵の笑みを浮かべている時雨さん。理由はよく分からないが、とりあえず慎が来たことは意外な結果らしい。わからなくもない。気難しそうな人だし。


 時雨さんは紙袋の中をあさり、慎にチーズバーガーを渡す。琳もチーズバーガーを受け取るとわーいと喜びながら椅子に座っていた。


 明津先輩に飲み物を手渡しされている琳に続き慎も座ろうと椅子に手をかけて————「そういえば椅子、六脚しかないけどどうすんの?」一度引きかけた椅子を元に戻して時雨さんの方に目を向けた。



 確かに、椅子は六脚。主語が抜けているが「どうするの?」は私に対しての言葉、だろう。昨日までの在住人分しかなく、私の座るところはない。



「あー確か倉庫にまだあったはず。今持ってくるわ」


「テレビ前のソファーのところで食べてよければそっちで食べるので、後で大丈夫ですよ」


「……そうか、悪いな。晩飯はこっちで食おうな」



 時雨さんが申し訳なさそうに言うものだから、いえいえ大丈夫ですよと下手くそに笑うことしかできない私が憎い。コミュニケーション能力、働け。


 ソファーまでハンバーガーにポテト、あと飲み物を持って行く。


 ふと気配を感じて視線をずらせば、なぜか慎まで着いてきていた。ソファー前に設置れているローテーブルの上にハンバーガーなどを置いていくのを思わずまじまじと見てしまう。



「……なに?」


「な、なんでもない」



 私も慎と同じようにハンバーガーなどを置いていく。


 L字ソファーのなため私のすぐ隣でもなく、向かい合っている訳ではないが、なんとも言えぬ気まずさが流れた。



「……一人でこっちに寄越されるの、気まずいかと思ったから俺も付き合ってあげるだけだから」


「そ、うなのか。……えっと、ありがとう」


「礼なんていらないし。早く食べな」


「うん」



 慎は優しい人なのかもしれない。……不機嫌そうな顔だが。

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