第22話
「ただいま。そこでぐーたらしてる二人、穀潰しになりたくなければ冷蔵庫に物入れるの手伝え。さもなくばハンバーガーやらん」
「それ買ってくれたの能登さんじゃん! 時雨の権限はない! あとおかえり!」
「俺は能登さんの意志を継いだ。よって俺に権限が委ねられた」
「時雨たまにボケるのは困るからやめて? ボケは俺かナツキでしょ? そんなんじゃトリオとしてやっていけない」
「やっていく気がない。いいから早くしろ。ほらナツキも動け。いつまでテレビ見てんだ」
「……待って、今いいところ……あー見て、ここのタンドリーチキン美味しそう……」
「ほんとそのグルメ番組好きだよな……タンドリーチキンじゃなくてチキンナゲットならあるから、ほら」
時刻は既に十二時を過ぎて一時近い頃、寮に到着した。
能登さんが「このハンバーガーは三階の子たちにあげてくる〜」と。そして琳が「俺も付き添いますよ」紳士っぷりを発揮してついていった。二人が三階まで上がっていくのを見届けて、時雨さんと私は二階の共有スペースへと直行。
エコバッグは二人で分担して持っているが、私の持っている方は軽いものばかりで時雨さんが持っている方は重たいものばかり。早く置かせてあげたい。
共有スペースでは、確かアクツ先輩とヒゴ先輩、がテレビを見て寛いでいた。
どうやら、こちらの二人と時雨さんたちは幼なじみで仲がいいそうだ。特に時雨さんとアクツ先輩は家が近くなのもあり物心つく前から一緒で兄弟みたいなものだとか。
確かに、友達同士というより兄弟のように見える。
「帰り早かったね。もっとゆっくりしてきてよかったのに」
「まあ目的が目的だったし、長居する理由なかったんだよ。カップ麺のストックは……減ってねえな」
「ハンバーガー買ってくるから待っててっていうラインきてたし食べませんー」
「はいはい偉い偉い。あっナツキ、そのクッキーは昼飯後でも勝手に開けるなよ」
「……俺のじゃない、の……」
「なに『信じられない』って声出してんだ」
……本当に、仲が良い。
エコバッグから物を出しながら、ぼけっと幼なじみな先輩トリオを眺めてしまった。
そんな時、バチッとアクツ先輩と目が合った。もっとも、アクツ先輩はすぐに目を逸らして作業に戻ってしまうが。
……そうだよな、見ず知らずの人にガン見されてたら居心地が悪いに決まっている。アクツ先輩には申し訳ないことをした。
いそいそとエコバッグに手を入れ、手に取った物はどこに収納すればいいのか時雨さんに聞いて仕舞う。
それらを繰り返して数分、これらの作業を担う人数が多いのもあって直ぐに終わった。エコバッグも一回洗濯するようで時雨さんが回収済み。
ヒゴ先輩が素早くハンバーガーの入った紙袋が置いてあるテーブルにまで移動するとハンバーガーをもそもそと食べ始めた。余程お腹が空いていたのだろう。
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