第20話

————百均での買い物を手早く終えた私たちは一階に下りて食品売り場に来た。一階のフロアほぼ半分を占めているだけあってかなり広い。


 買い物カゴを置いたショッピングカートを押している藤村先輩の姿がやけに様になっていて本当に高校二年生なのか疑いたくなった。横にちょこちょこついて行く琳がお母さんの買い物についてきた小さな子どものように見えて仕方ない。



「祐希は和食が好きなんだよな?」



 車の中でした会話を思い出しながら話す藤村先輩に軽く頷いて相槌をうつ。



「そうですね。あ、好き嫌いは基本的にないのでなんでも食べます」


「好き嫌いねえのはありがてえわ。空も見習って欲しいもんだ」



 藤村先輩のぼやきを聞くと、チビワは野菜のほとんどが苦手で食べようとしないらしくあの手この手と工夫を施して野菜を食べさせようとしているらしい。



こんなに野菜を食べさせようと奮闘する男子高校生はなかなかいないと思う。やはり藤村先輩が高校生に見えない……。



「あの、藤村先輩」


「なんだ?」



 おずおずと「もしよろしければ、肉じゃがが食べたいです」と言うと「煮物料理は得意だ、任せろ」と藤村先輩が得意げに笑う。


 買い物は順調に進んでいき、藤村先輩は必要なものをぽいぽいと。琳はとことこと歩き回って必要なものをカゴの中に次々入れていった。



「時雨ー! 豚バラ肉ゲット! これでいいよね?」


「おう。よくやった」


「へへへー。あと何必要?」


「そうだな、あとは琳の食べたいもの持ってきてくれ。なんでもいいぞ」


「! ……わかった! 時雨大好き!」



 ……なんだろう、すごく心が満たされていくのを、感じる。満面の笑みを浮かべて軽やかな足取りで離れていく琳がとても可愛かった。

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