第19話

火照った顔を見られないよう誤魔化しながら二階にある百均に辿り着いた。



 藤村先輩が「欲しいもんあるから探してくる。祐希はゆっくり選んでていいぞ」と言い残して琳と共に別の陳列棚へ向かっていき、私一人となる。



 食器類コーナーをぐるりと回ってみて、一番目を引いたピンク色の花が描かれたプラスチック製の白い茶碗を手に取ってみる。和風で私好みだ。


 描かれている花は何かわからない。けれど、その花を見てなんとなく弥生を思い出した。


 華やかな美人で、目を引く見た目の弥生。美人でなく地味で影の薄い私とは大違い。



 私はさしずめ道端の雑草といったところだろう。せめてアスファルトから元気よく顔を出す雑草になりたい。



 色々思うところはあるが、やはりこの茶碗が気に入った。弥生のことを思い出すのも、ある意味弱い自分や今は逃げているだけだということを忘れずに済む————と思っているが、今だけは、逃げに走ってもバチは当たらないと願いたい。



 ……藤村先輩と琳のところに行こう。



 私は茶碗を大事に両手で持って移動を始めた。


 ぐるりと辺りを見回すと、百八十近い高身長に真っ直ぐ腰まで伸びた黒髪の人の後ろ姿、愛嬌のある笑顔でその人にてこてことついていく少し小柄な少年……間違いなく藤村先輩と琳だ。


 それほど派手ではないが、やはり藤村先輩の綺麗な黒髪は目立つ。顔を見て思わず二度見をしてしまうが似合っているんだよな。



「茶碗、選んできました」


「お、早かったな」


「おかえり〜」



 藤村先輩が私の持っている茶碗を見て「へえ、綺麗な柄だな」と呟きそのままひょいと茶碗を取る。藤村先輩が既に持っていた物と一緒にレジまで持って行かれた。



「祐希ー、ぼんやりしてると置いてかれちゃうよ」


「ご、ごめん」



 あまりにもスマートにやられたせいですっかりショートしていた。いけない、いけない。しっかりしろ私。

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