第15話
「げ、まだいる」
突き刺さる視線にいたたまれない思いになっている時、ドアが開いたままの共有スペースに女生徒の制服からシンプルなパーカーとジャージズボンに着替えた美少女顔少年が入ってきた。もう女装してないけれど十分美少女だな、この子。
私を見るなり嫌そうな顔をしてる彼に「もー空、そんな反応しないの。怒るよ」琳に注意されて口を尖らせている。とりあえず、挨拶はしとくか。ただし嫌味は込める。
「……えっと、どうも。美少女さん」
「誰が美少女だ! 俺は
「辻祐希です一年です。そういう君は誰かの弟? 中学生か?」
「お前とタメだわボケ!!」
どうやら中学生と言われたことにご立腹なのかきゃんきゃん騒ぐ顔面美少女少年もといヨギリソラくん。なんというか、小さいのもあってチワワに見えてきた。ボケって言われたことに関しては私が大人になろう。子どもだなぁと流せばいい。
「ど失礼な女はモテねえぞ!」
「モテたいと思ったことは無い。きゃんきゃん騒がない方がいいぞチワワ……いや、なんでも」
「うるせえ犬じゃねえ! この貧乳!!」
……かっちーん。
いや、貧乳は否定しない。悲しいまでに貧しい胸部をしてるのは毎日風呂場で見ているから嫌でも知ってる。だがな、それを女子に、真っ向から言うのはいただけない。頭にきたので私は大人になるのをやめる。
「……チビ」
「これから伸びるんだよ!!」
「チビ……チワワ…………チビワ」
「混ぜるな!!」
「チビワうるさい」
「んだとアバズレ!!」
「アバズレとはなんだ! そもそも意味知って言ってるのか!」
「アバラがズレてる女!!」
「全然違うわ馬鹿!! ……え、待てそういう意味で言ってるってことは私の肋ズレてるか!?」
「うるせえ!!!」
ヒートアップしてきた口喧嘩をしてる私たちに、それはもう硬い何かが頭上から振り下ろされた。それが拳であり、ゲンコツされたのだと理解するのに時間はそうかからなかった。しゃがみ悶えながら、たんこぶの有無を頭を抑えつつ確認してみる。たんこぶはなし。こんなに痛いのに……。
拳を振り下ろした人を見上げると、鋭い目、腰までまっすぐ綺麗に伸びた真っ黒の髪の毛、一瞬女性に見間違えたが大人びている整った目鼻立ちは男性のそれで、思わず見とれてしまう。だが、表情はいかにも「怒」っていう具合で、形のいい眉はキリリと持ち上がっていた。
「空! また
「いってぇな時雨! つか今回は慎じゃねーから!! よく見ろよ!」
「よく見ろだぁ? どう見たって………………」
私を視認。「ど、どうもです」と下から声をかける。鋭い目は触れたら切れてしまいそうで少し怖いが、じっと見る。
「…………」
今も尚頭を抑えてる私を見て、シグレと呼ばれた長髪の人は何も言わずしゃがむと「悪い……」と心底申し訳なさそうな顔をして謝ってきた。逆に私が申し訳なくなった。
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