第14話
赤髪の美少女は悪態をつきながら共有スペースから去った。お口が悪いぞ。
私とすれ違う瞬間、ほぼ変わらないか少し低いであろう背丈、長くびっしり並んだ睫毛、ニキビなんて一つも見当たらない綺麗な肌に目を奪われてしまう。ひらひらと揺れるスカートがまるで蝶の羽のようでなんだか可憐だ。ただの学校の制服スカートなのに、美少女が着ればこうも変化を遂げてしまう。ありとあらゆる要素が美少女さに拍車をかけていた。
……うん、まあ、若干ガニ股で、大股歩きという美少女にあるまじき歩き方で私は面食らったわけだが。
ワイルド美少女が通り過ぎてから琳にこっそり話しかける。
「あの女の子……その、せっかく可愛いのにもったいないな」
「……ふふ、祐希。そのこと空の前で言ったらダメだよ? 空は“男の子”なんだから」
……………………。
私の思考が、一瞬宇宙に飛んで行った。なんとか戻せた。
「男?」
「うん」
「さっきのあの子が?」
「そうだよー」
「………………」
先程の美少女……いや、美少年の姿を思い出しては、消去して、思い出すを少し繰り返し、性別詐欺の人間ってこんな近くにいるもんだな、と。最終的に思考を放棄した。冷静に考えてみると能登さんは「女の子が居なくて寂しい」と言ってたし。
色々気になることはあるが、そのことを聞く前に挨拶した方がいいことに今更ながら気づき改めて茶髪と黒髪の人の方を向いた。ばっちり目が合うのを確認すると。
「あの、私、一年の辻祐希です。少しの間ですがよろしくお願いします」
早口になりながらも名乗る、そしてすかさず頭も下げる。おそるおそる頭を上げて相手の方を見てみる。
「あー、と。俺は
茶髪の人もといアクツ先輩はへらっとぎこちない笑みを浮かべて挨拶を返してくれた。
「……
顔が見えない黒髪の人もといヒゴ先輩はぼんやりしたまま。
二人共どこか掴みどころのない雰囲気で、拒絶はされていないだろうけど壁を感じた。まあ、そんなもんだよな。
なぜかわからないが、ヒゴ先輩の、髪で隠された目からの視線がびしびし刺さる。私がもう少しお調子者だったら「そんなに熱い視線向けられたら照れますよ〜」なんて言えただろうけど、無理だから視線に気付かないフリをした。
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