第10話

寮監室は玄関口から目と鼻の先の所にあった。『寮監室』と書かれた札が貼られている扉を寮監さんがノックをしてから開ける。相手からの返事もないのにだ。仲が良さそうな雰囲気は見受けられるし、それゆえの行動なのかもしれない。


 寮監さんの後に続くようにカヤノくんが入ると、扉を支えて私が入りやすいよう道を作ってくれた。優しい。おずおずと身を滑り込ませる時にパチリと目が合って、にっこりと微笑まれた。私はどうすれば? 微笑み返せないぞ?


 カヤノくんは本当に、愛想が良くてとても可愛らしい。純粋無垢さが溢れ出てる。おかげでこちらは終始挙動不審になってしまう。



「のとっちゃーん、連れてきたよー」



 私がカヤノくんに気を取られていると寮監さんが恐らくここの寮監であろう人を探していた。いけない、いけない。美少年に対して挙動不審になってる場合じゃないんだ。


 改めて、寮監室を見てみた。女子寮の寮監室とはやはり少し違った造りになっている。


 部屋から入って見て、少し横長な寮監室は右手側に二人がけのソファーでローテーブルを挟み、その奥には机と椅子もあった。


 部屋の端には各部屋ごとに仕分けられた引き出しがびっしりと並んでいたり、左手側にはチェストやスチールラック、それらには収納ボックスがどどんと積まれていたり、扉があったりと、色々あるがシンプルにまとめられておりごちゃごちゃしていない。ここの寮監さんは整理整頓が上手なのだろうか。



「つるちゃん! 待ってたよ〜」



 効果音をつけるとすればゆるーん。そんな雰囲気の柔和な声音が左手側にあった扉の開く音と共に聞こえてきた。肩下まで真っ直ぐに伸びた黒髪はほんのり茶色がかって、人畜無害そうだなと思わされる顔立ち。垂れた目も相まって第一印象は『優しそうな人』だ。


そして美人。そう、美人なのだ。

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