第9話
「茅野くんこんにちは。お迎え頼まれていたの?」
私がぼけっとしている間に寮監さんはにっこり微笑んで挨拶をする。それに、礼儀正しくぴしっ、そしてにっこりと笑顔で「こんにちは」と挨拶を返すカヤノくんという人は見るからに真面目で、優しそうだ。
「そうなんですよ、新しくここに入る子がいるからお迎えよろしくって寮監さん……あ、能登さんの方の寮監さんが教えてくれまして。 まさか女の子だとは思わなかったんですけど」
ちらりと私の方を見やる。カヤノくんのぱっちりした目と合い、思わず心臓が跳ねた。
「それじゃあ一緒に寮監室行こ!えーと、お名前聞いてもいいかな?」
にぱっと満面の笑顔を向けられた。私は心臓を押さえ込みそうになった。
「つ、
「祐希ちゃん!よろしくね!俺は
「そ、うですね」
「同じ学年だ〜!何組?」
怒涛の質問ラッシュに私はゆっくり丁寧に答えていく。そんな中、今時ここまでピュアなオーラをまとった男子高校生がいただろうかと思うほど純度高めだ、たじたじしてしまう、なんて考えていた。
雰囲気から伝わるお日様のような明るさとあたたかさがすごい。こんな人が同じ学年にいたのか。だがぼっち歴が少しばかり長い私にとってカヤノくんのその行動は戸惑いばかり生んでしまう。
ぐいっと距離を詰められたことに戸惑っていると助け舟を出してくれたのか、寮監さんが「ほらほら早く行くよ〜」と促してくれた。
カヤノくんは間延びした返事をすると申し訳なさそうに眉尻を下げて軽く微笑んだ。
「ごめんね、急に詰め寄られたら怖いよね……!じゃあ行こっか!」
申し訳なさそうにしているカヤノくんを見て「そんなことないよ私の対応力が低いだけで!!」なんて思うも口からは出てこない。精々「うん」と頷くことくらいしかできなかった。
────こんな私で大丈夫、なのか。
不安ばかり募っているように感じてならない。
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