第5話

ぐるぐる。ぐるぐる。思考が巡るも打ち消そうとして、思考回路のシャットダウンをしようにもすぐに再起動。そんなことをしてたら寮監さんが私の目を見て、にっこりと。先程の不敵な笑みとは違った優しい笑みを浮かべていた。



「辻さんはとても頑固だから、とにかくこちらで勝手に動かせて貰うわね。解決、というか、ある意味避難という形で貴方には別の寮に移ってもらうからよろしくね」


「……え?」


「返事は?」


「いや、だって、寮を移るって」



 私が言葉を紡ぐ前に「返事は?」とまた寮監さんに挟まれて、小さなか細い声で不服そうな返事をするしかなかった。


「っでも、そんな、突然言われても」


「もう決まったの。さーて管理者にも連絡しないとなぁ。ほら辻さん荷物まとめに行くわよ。ほら立って」


「う、ぐ」



 ───物事は、自分の思い通りにはいかないし、むしろどんどん悪い方向に進む。この時ばかりはそう感じてた。


 どうして私ばかりこんな目に!なんて悲劇のヒロインぶってしまうつもりはないが、ついそうなってしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る