同一人物?
眼下に見えるこのマンションのエントランス。
30階から地上を見れば、高所恐怖症の人は足がすくむだろう。
歩く人も豆粒大だ。
フェンスに張り付いて、サヨナラした隆至の姿を見送ろうと思った。
未練タラタラだなぁ…。
でも落下防止の設計が、私のそんな気持ちすらも邪魔をする。
「隆至…」
流した涙も乾いてしまった。
高層特有の冷たい風が体温も奪っていく。
「大丈夫?」
その言葉と同時に頭に誰かの手が触れると、驚きのあまり体が跳ね上がる。
「ビッ…クリしたぁ…!」
姿を表した高森は、リラックスするような服装に着替えていた。
「声が大きくて聞こえた」
「 バイバイ って」と続けると、私が張り付くフェンスに背を預ける。
「あー、ハハッ 聞こえちゃいました?」
「それって、いってらっしゃいの意味じゃないよな?」
見たこともない流し目でこちらを見ては、腕組みをした高森。
その質問に俯き、無言でいるしかなくて。
「言っておくけど、沙彩が恋人と別れてもこの関係は続けていくから」
「…」
……。
は?
え?
「なんか、さっきまでと話し方も態度も全然違うから単純にビックリしてるんだけど…。…本人ですよね?」
「本人だよ」
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