羨望

「そう言えば匡高は、大学の時に起業してたんだよな?」


「はい、そうです。今はもうすべての権利は後輩に譲ってしまいましたが」



 起業?!

 大学生の時に?!

 どんだけ優秀なんですか!



「 “ おじいちゃんなわとび教えて ” って言ってた幼稚園の頃が懐かしいなぁ」


「本当ね」



「大きくなったなぁ」と、父方の祖父母達が高森の小さな頃を懐かしんでいた。

 席に座る人達が次々と高森の子供の頃を話していて。

 それを見ていると、私の口元が緩む。


 隆至の目の前でお見合いの話が来た時に、私の子供の頃の話をしたことがある。


 私は一人っ子。


 親の言う事は絶対。


 会社の集まりなどに顔を出す時の仕草や言動など、厳しくしつけられた。


 だから会社関係の人間に会うのが嫌だった。


 ――と。



 高森のように、両親から優しい声で名前を呼ばれた記憶はあまりない。

 威圧的な父親の声が私の名を呼ぶ度、ビクビクしていた。

 ピアノがうまく弾けない時に怒る母親の声が大嫌いだった。


 強張った顔の高森が、子供の頃がこんなに愛されていて、その話で盛り上がる目の前の微笑ましい光景に笑みが零れる。

 本人は照れくさそうにハニかんでいるし。



「…」



 高森が、羨ましいな…。

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