“ 哲弥 ”

「お爺様。結婚したらかと言って同じじゃなくても良いと、私が沙彩に頼んだんです。父も母も納得していますよ?」


「そうなのかい?」


「はい。でも、私達を気にかけてくださってありがとうございます」



 ちょっと今の私の精神状態だと、嘘でもその私を認めてくれてるような発言は、心に響いた。

 それがたとえ、契約結婚をしても仕事は辞めなくても良い、と言う条件だとしてもだ。

 今朝抱いた暗い気持ちには、肯定してくれたことで元気付けてもらえた気がする。


 その高森のお陰で話が切り替わり、話題は高森の兄弟の話になった。

 三男は海外へ出張中のため、今日は参加できないと車の中で高森に説明されていた。

 長男の事はグループの仕事に関わっていないとかで、珍しく歯切れの悪い言い方をした高森が気になったけど、「そうでしたか」と、それ以上は突っ込まなかった。

 先日の、一馬かずまさんや大輔だいすけさんや郁人いくとさんがいないなら楽だと思ったし、まぁいっかと言う程度だ。



哲弥てつやも来られたら良かったのになぁ。久しく会ってないぞ?」



 高森の母方の祖父が、ポロッと言った一言で、高森は箸を持つ手が止まった。



“ 哲弥 ”



 聞き覚えのある名前だ。

 一馬さんが確か、高森に喧嘩を売った時に放った名前だ。

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