12
やんわりと嗜められた薔華は、戸惑ったように言葉を詰まらせる。
「ですが……ですが私は、お二人には大変お世話になりましたから」
その言葉に、瑛都と勇勝は口元をほころばせた。
「覚えてくださっていたのですね。ですが姫さま。姫さまはご自分でほとんど乗り越えてこられたではありませんか。私どもにできたことなんて、本当にほんの少しでしたよ」
「そうですよ、姫」
「ですが……一日一度の傷の手当て、私にはとても幸せで優しい時間に思えたのです」
幼い薔華の痛々しい傷を優しい手つきで手当てしてくれ、時々、こっそりと菓子を握らせてくれたのは、間違いなく眼前に立つこの二人だ。
「そうですか? それは、とても嬉しく思います。姫のお役に立てて光栄ですよ」
「……はい」
「ところで姫さま。そんなに書物を抱えてどちらへゆかれます?」
「あぁ……書庫で、夜まで読もうと思って棚から拝借したのですが……」
薔崋は苦笑をうかべる。
「いろいろあったので、自室で読もうかと」
瑛都が微笑んだ。
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