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「……おや?」


 足早に進んでいた廊下の先から聞き覚えのある声がして、薔崋ははっと顔をあげた。


「……」


 その視線の先にあった顔を見て、ぱちぱちと目をまたたくと、薔崋は記憶の糸をたぐりよせる。


「……あ」




『さあいらっしゃい、姫。傷口を洗いましょう』




「……修瓏代表、瑛都殿に……修湖代表の、勇勝殿……?」


 その言葉にやわらかく微笑んだ三十代後半ほどの男は優雅に腰をおった。


「お久しゅうございますね、姫さま」


 瑛都の隣に立つ男も、無表情のまま礼をとると挨拶をする。


「久しくお目にかかります」


「お久しぶりです、瑛都殿、勇勝殿」


 彼らと同じように丁寧に礼をとった薔崋を見て、瑛都はあわてたように首を振った。


「姫さま。私ども相手に、そのように簡単に頭を下げられてはいけませんよ」

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