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「……はあ? お前と一刻過ごすんですか? 私が? 何のために? 理由を言ってください」


「理由なんてどうでもいいだろ? お前にある答えの選択肢は『是』か、『否』かだ」


「……『是』と答えた場合に、私にとってなにか利益がありますか?」


「利益?」


 令六はしばらく考え込んだ後、


「……ないな。ああ、俺と一夜すごすっていうのでもいいが。いい体をしている女の相手は惜しまないからな」


 とんでもなく最悪な提案だった。


「いりません。ない方が結構。ないのが一番の利益です」


「ひどいこと言うな。で? 答えは」


「……」


 薔華はしばしの沈黙の後、


「……『否』と言っても、結局は『是』と言わなければ話が終わらないのでしょう」


 呆れたように呟く。


 令六はくっとわらって再度促した。


「答えは」


「……『是』」


 ため息まじりに答えると、壁についていた手が離れる。令六は完全に薔崋から体を離した。


「二言はないな?」


「ありません。じゃ、さよなら」


 不本意だが、薔華にとっては嫌いな相手と押し問答をして時間を浪費するよりましだった。


 令六を睨むように一瞥すると、分厚い書物を手に、薔崋は部屋へ戻るべく足早に書庫をあとにした。




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