9

「今ここで、その首を飛ばしましょうか」


 すっ、と、細められた薔崋の目に殺気がうかぶ。


「落ちつけよ。そんなに殺気をあらわにして、仮にも忍らしからぬ行為だと思わないのか?」


 揶揄うような、馬鹿にしたような口調にも感情を昂らせることなく、薔華は淡々と言う。


「首を、飛ばされたいですか? 今すぐ退いてください」


「いいぜ」


 令六は意外にもあっさりと、頷いた。


 薔崋はふっと息をついて、再び車庫の外へと足先を向けた。


 しかし、


「ただし、ひとつ条件がある」


 そう言って退くそぶりを見せない令六を、薔崋はじろりと睨みあげてやった。


 令六はクックッと嘲るようにわらう。


「内容を聞いてからでいい。『是』か『否』か。もちろん、『否』ならここから動かないけどな」


「……」


 薔崋は令六をますます睨んだ。


「何ですか」


「明日半日、いや、一刻でいい。あんたの時間を俺にくれ」


 顔をぐっと近づけられ、薔崋は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて眉をひそめた。

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