第16話

 今回の事件の後、谷口は自主した。


 岩下が殺人未遂で捕まった事が、自主を後押しすることになった。


 岩下の取り調べの担当は丸山だったらしく、岩下は「探偵を出せ!」と何度も叫んでいたそうだ。


 一方で何も知らない被害者の溝口は、何も知らないまま、友人と恋人を失うことになった。少し、可哀そうな気もするが、何も知らないまま殺されるよりはマシだろう。


「青山さん、コーヒーいかがですか?」

 僕の事務所では相変わらず高瀬が働いてくれている。彼女が居れるコーヒーは、美味しい。


「ぜひ、いただきます」

 高瀬は「よし来た!」という感じで、コーヒーを入れていく。


 僕はその様子を見ながら、次の動きを考えていた。

 鶴見香菜と関りがあったヤクザが怪しいと睨んでいるが、単身乗り込むのはリスクが高い。丸山は警察としての顔があり、ヤクザの調査となると色々まずい。協力は仰げない。どうしたものだろうか。


「コーヒー入りましたよ。なんか悩んでそうですね?」

 高瀬がコーヒーを僕の机に置く。煙が立っていて、いい香りがする。

「いいや、大丈夫です。気にしないでください」


「あ、そういえば、一つ相談してもいいですか?」

「ああ、はい、どうぞ」

「私の妹から聞いた話なんですけど、なんか最近、妹の学校、不思議らしくて」


「どういう事ですか?」


「その、学校の七不思議ってあるじゃないですか? その中の1つに歩く人体模型ってあるらしいんですけど、みんながその人体模型を探しているらしいんですよね」

「……好奇心じゃないんですか?」


「いや、妹が言うには、『そんな感じじゃない』らしいです」


「……調査してみます?」

「よろしくお願いします。今度、妹も連れてきますね」


 ヤクザの方も調べなけれいけないが、とりあえず、今は高瀬の妹の学校の調査。

 僕は少し、疑いの気持ちを持ちながら、今後の方針を決めた。

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