第14話

「先輩使いが荒すぎやしないか?」

 丸山はそんな文句を言いながら、車を降りてきた。丸山が到着したのは電話してから15分ほどだった。きっと急いできてくれたのだろう。そして、手には一つのファイルが握られている。


「ありがとうございます」

 僕はわざと作り笑顔を顔に張り付け、右手を差し出す。


「わかったよ。それより喧嘩は?」

「ああ、喧嘩なら嘘ですよ」

 僕はファイルに目を通しながら答える。

「は?」

「いや、だから――」


 僕がファイルから視線を外し、丸山の表情を見ると、そこには鬼が居た。

 あ、やべ。これマジで怒ってる顔だ。


「おい、マジで嘘なのか?」

「その、喧嘩は嘘ですけど、さっき男がナイフ持って、人を殺そうとしてたんです」


 僕は回収していたナイフを差し出す。すると丸山は何かに気が付いたような表情をして、僕に聞く。


「そいつら、今は?」

「今そこで寝てますけど」


 すると、丸山は急いで溝口と岩下の居るベンチへと向かう。

 二人の事を確認すると、丸山はナイフで二人の指先を切り始めた。

「ちょっと、何やってるんですか⁈」

 僕が丸山を止めようと近づくと、丸山は僕にナイフの柄を見せてきた。そこには見たことない紋章が描かれている。


「その紋章がどうかしたんですか?」

「この紋章はあっちの世界でしか使われていない紋章だ」

 僕は丸山の行動に合点がいった。二人がインベーダーである可能性を考えたのだろう。


「それで、血の色は?」

「両方赤だ」

「……そうですか」


 岩下が持っていたナイフが、あっちの世界のもの。岩下の近くの人間が、インベーダーである可能性がある。


「悩んでいる様子だが、そのファイルの中に答えがあると思うぞ」

 僕の様子を見た丸山が、助け舟を出すように言った。僕はそれに従い、ファイルの確認を再開する。


「あ、」

 ファイルを見ると、全ての謎が解けた。

「その、ありがとうございました」


「ああ、一応だが、ナイフを持ってたのはどっちだ?」

「左の方です。岩下と呼ばれていました。下の名前は知りません」

「一応話を聞いてみるから、一緒に車まで運んでくれ」


 ええ……っと思いながらも、谷口を調べてもらった件があるので、協力しないという選択肢は無かった。

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