第20話 お兄ちゃんの回想なんだぜ

 俺たちの親父は楽観的な人だった。

「おい! 今度マッドアックスと組ませてもらう事になったぞ!」

「えー、大丈夫なのか? あんまり良い噂聞かないけど」


「この街唯一のBクラスパーティだぞ! そこが持ってきた美味しい話に乗らないって手は無いだろう」

「美味しい話ってのが逆に怪しく無いか?」


「お前は疑い深いなぁ、そんな事じゃ美味しい話にいつまで経ってもありつけないぞ」

「そういう一攫千金みたいな事ばっかり言ってないで、堅実に実力に見合ったことしろよ」


「ところがどっこい! これが実力に見合った話なんだなぁ、これが!」

「ん? どういう事だ?」


「ハッハッハ! 俺はな! ランクこそ低いが鍵開けに関しては、この街で俺の右に出るもんはいねぇ」

「……鍵開けダンジョン行くのか?」


「おうよ! 向こうは腕っぷしは強いが鍵開けは苦手、俺は鍵開けは得意だがあのダンジョンのモンスターに太刀打ち出来ねぇ。

 お互い足りない物がピタッとハマったわけだぁ!」


「胡散くせぇ」


「何を言ってる! かなり良心的な条件だぞ!」

「どんな?」


「まず、ラスボス攻略した時のお宝は俺が貰える。

 道中のものは向こうだが、鍵を一箇所開けるごとに道中のお宝から金貨一枚分を分け前で貰えるって寸法だ!」


「どう考えても条件良すぎるだろう」


「それだけ払っても充分儲けが出るほど、あのダンジョンは美味しいんんだよ!」

「本当にぃ?」


「分かってねぇな、まずなあそこで出るモンスターは獣系が多い、特に狼系だな。

 コイツらは皮も牙も爪も金になる。

 次に宝箱の出現率がバカ高い! 鍵がかかってる扉は次の階への階段か、宝箱か、モンスターの3択だ! 次の階ってのはフロアに一個しかないから、ほぼほぼ宝箱かモンスターな訳だ!」


「狼で金貨一枚にもなるのか?」


「序盤は難しいかもしれないがな、二つも下に下がれば金貨一枚や二枚なんて余裕よ!

 それで宝箱から当たりが出ればウハウハさ!」


「本当に大丈夫かぁ?」


「お前はまだ子供だからな、こういった金の匂いがする話を見極められないんだ」

「どう考えても親父が迂闊なだけだと思うぜ。 だいたいそんなに金集めてどうするんだ? 今だって生活するのにそんなに苦労してないだろう?」


「俺はな、この冒険でしこたま金を稼いだら、ユリカに従魔買ってやるんだ!」

「従魔ぁぁ……?」


「ユリカは、テイマーの資質あるそうじゃないか!

 他のテイマーが育て上げた従魔ならレベル低くてもテイム出来るんだろ?」


「それはそうだけど、買おうと思ったらとんでもない金額になるじゃねぇか」


「あぁ、そうだ! だからこの仕事で金稼いで買ってやるんだ!」

「やめとけって、そんなことしてもアイツは喜ばないって!」


「そんな事ないって! 従魔買ってもまだ余るだろうからな、そうしたらお前にも何か買ってやるよ」

「俺は妹のオマケかよ!」


 親父は楽天的な人だった。

 だが、俺も考えが甘かった。


 この時は、なんだかんだで言っても、親父は戻ってくると信じて疑ってなかった。


 だが、結果は最悪だった。

 親父は死んで、俺たちにも大きな危険が迫っていた。


 焦って後先考えずにココに逃げ込んだんだが、正直これからどうしていいか分からない。

 強くなれば、強くなれば何かが変わるかも……そこに一縷のの望みをかけるしかない。


 森の中か遠吠えが聞こえた。

「ん? いつもと声が違うな?」


 俺は声の聞こえた方に移動した。

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