第23話
「早速ですが、私の考えを伝えます。事は一分一秒を争うのでよくお聞きください。まずこの裏を仕切る三名のお方。あなた方はお逃げなさい。『澪』なんて組織は知らない。関わってもいない。後は自らの権力の赴くままに生きなさい」
「ちょ、何でやイシュタルはん!儂は組長にも、あんさんにも恩義感じとるんや!これは戦争やろ!戦力はただの人間一人でも多い方が…!」
「まあ、言いたい事は分かる。国が本気の本気。総力を挙げて向かってきている。このまま『澪』にいた所という事実だけでどうなるかなんて想像がつくわな」
「ええ、ですがモリモト。貴方には最後にやってもらいたいことがあります」
「……ほお?なんだ、言ってみろ」
「私達の証拠隠滅は、ヨイヤミとその配下の八割が荒探しをしても見つからなかった。データは『ユグドラシル』で保存してあるため間違いなく人間どもには見つからないはずなのです。だがそれでも見つかったという事は」
「…間違いなく情報元は依頼主」
「ええ、その線で間違いありません。ですので最後の仕事ですモリモト。暗殺しなさい。私達が死んでもなお。力は健在という事を闇から知らしめるのです。その間に『澪』は海外へと散り散りになっているころでしょう。勿論マスターからの顕現で質の高い『ユグドラシル』を預かっています。そして報酬も」
「最後の仕事ってわけか、分かった。受けよう」
「ありがとうございます。森本重蔵」
「ああ、勿論だ」
「私の方からも金を回しますよ、森本さん」
「そして萩高菅野。貴方には『澪』のスポンサーになっていただきたい。何かあった際には金を出してやってください。ちなみに額は5000万まで、それまでを最低基準に、後は好きに稼ぎなさい。もう何も邪魔する物はありませんよ」
「イシュタルさん。いいことを言ってくれる…僕は確かに金は好きだが、金を生み出すのは人だ。特に今ここにいる者たちの御縁、忘れるわけもないでしょう。その御縁を当てに、次は是非うちの銀行に来てください。サービスしますよ」
「何がサービスしますよだ闇金。誰でも十一で貸すんだろうお前は」
「ええ、いつもならそうするんですが、私もそこまで鬼ではない。特にあなた方の前ではね?」
「おお、言ってくれるじゃあねえか」
「そして最後に藤原。お前には予定通りに英国ヘと向かってもらいます。そしてお前とシュラルの二人で、イギリスの裏に穴を開け、蟻の巣を創り上げなさい。必ずマスターを、その王座ヘと向かわせます。我々の手で」
「………了解や、イシュタルはん」
「 ……これでよろしいでしょうか?マスター」
「ああ、そしてこれは、俺からお前らに。退職祝いだ」
こうして渡されたのは指輪状のユグドラシル【聖遺物殿】の劣化版。
「…これは、坊ちゃんのユグドラシルの模造品じゃないのか?」
「ああ、その通りだ。お前らならうまく扱える。俺はいつも配下に持たせるようのスペアを、作れる時に作るんだが、お前らに渡しておく。これで成すべきことを成せ」
「了解や。組長」
「ええ、分かりました」
「了解。坊ちゃん」
「…以上で会議を終わります。では、残りの時間でできる事をしましょうか」
◇
「悪いなイシュタル。マルクス。カメロン。ヨイヤミ。シュラル」
「いえいえ、我らマスターの為、この命燃やす所存でございます」
「マスターの為に道を切り開きましょう」
「我ラノ命。マスターノ為ニ!!!」
「私をお救いになった時から、私はマスターに全てを捧げた身。これしきの事苦にもなりません」
「…………マスターの為にこの命。一滴残らず燃やしましょうぞ」
「悪い。今はそれだけしか言えない。だが約束しよう。お前らは俺の配下だ。俺にできない事なんて一つもない。お前らを創ったのはこの俺だ。絶対に、何があっても…」
「「「「「我ら。中宮創太の命ある限り。この身捧げる事を」」」」」
「……即興か、大した奴らだよ…フフフ、アハハハハハハ」
こうして会議室の中で、中宮創太の歴史ある配下たちが膝を尽き、改めて配下としての命を燃やすときがやってきた。
彼らは一人残らず胸に誓った。『主たる中宮創太の為に、命を燃やさん』と。
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