第1章 第23話 決別の時

前回までのあらすじ

鬼人衆・獣鬼人ヘルハウンドを倒し、龍鬼人・ガルグイユと戦闘するカトレア

カトレアの強さを以てしてもガルグイユの振るう魔剣・リオニスには勝てなかった

ガルグイユの放った必殺の一撃・インビジブルハーケンを受け、力を温存していては勝てないと悟るカトレア

そして、カトレアは力を温存することを諦めてガルグイユの攻撃を全て回避するのだった

インビジブルハーケンを受けて魔神槍を犠牲にし、アビスフレアで反撃をした

ガルグイユを退け、安心したのも束の間

ヘルハウンドにアランを人質に取られ、アランは自分はどうなっても良いからヘルハウンドを倒せと言うがカトレアには出来なかった

その次の瞬間、ヘルハウンドに向け、剣が飛んできた

剣を投げたガルグイユは鬼人衆の名を貶すのであれば仲間であろうと容赦はしないとし、カトレアに魔剣・リオニスとエレシュマの願いを託した

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音也はカトレアの魔力で作られた牢屋に閉じ込められ、それをシャルロットたちが守る

そして、ついにその時は来た

それは翼を広げ、空からシャルロットたちの前に現れる

エレシュマだ

「早く勇者を差し出せば貴女たちは見逃してあげる」

エレシュマはただ一言それを言うとシャルロットたちを睨む

それに対し、シャルロットは返す

「それはできない

貴女がどんな目的を持ってるか知らないけど私たちは一歩も退かない

あなたの持つ最強の一撃で来なさい」

圧倒的強者への挑発、苦し紛れではなくシャルロットの覚悟だった

「どうやら本当に消えたいようね

いいわ、見せてあげる同族から忌み嫌われた力を」

エレシュマの周りに電気が起きる

それは音也のように天空から雷を呼ぶものではなく、生体電気を極限まで高めたものだ

「我が眼前の敵、必滅の時来る…

轟雷滅殺脚!」

エレシュマはシャルロットの腹部に蹴りを入れる

蹴りのダメージと生体電気で二重にダメージを与えるまさに必殺の一撃だ

「…轟雷滅殺脚を受けて生きている者は存在しないわ

例えそれが魔導人形でも」

しかし、シャルロットは起き上がる

それに対しエレシュマは驚きを隠せずにいる

「どうしたの?私は生きてるわ

もう一度来なさい」

シャルロットは傷だらけだがナオが横でヒールをかける

ナオが小声でシャルロットに伝える

「ごめん、シャルロット

ボクの魔力じゃ体力と傷の同時回復はできないみたい

焼けた人工皮膚は直せるけど体力は無理だ」

「傷だけ回復すれば大丈夫

この後控えてるサーシャまで耐えればいいから

アランの勇気が、カトレアのオトヤを想う気持ちが、皆の覚悟が私を強くしてくれてるの」

シャルロットは次の轟雷滅殺脚まで耐えるつもりでいる

それだけの覚悟があるのだ

驚いたエレシュマだが、直ぐに冷静さを取り戻してシャルロットを褒める

「轟雷滅殺脚を耐えるなんてそれだけで賞賛に値するわ

お望み通りもう一度使ってあげる」

エレシュマは轟雷滅殺脚の構えに入る

そして…

「轟雷滅殺脚!」

先程と同じ箇所を狙う

そして、再びナオがヒールをかける

エレシュマは溜息を吐き、ナオに向かって生体電気を飛ばす

「無駄なことはやめなさい、それ以上やるなら貴女から消し炭にするわ」

そこにサーシャが現れる

「風よ、敵を蹴散らして!ウインドバレッジ!ウインドブラスター!」

エレシュマに向かって溜めていた魔力を込めた一点集中型のウインドバレッジとウインドブラスターを放つ

エレシュマはウインドバレッジに対して、蹴りで地面を隆起させ、石壁で防ぐ

ウインドブラスターは石壁を破壊、エレシュマに飛んでくるが右腕の指一本で防ぐ

「そん…な…、全部防ぐなんて…」

「魔力を込めてこの程度なら私の前に立たない方がいいわ」

サーシャが隙を作った一瞬のうちにナオはシャルロットにヒールをかける

それに対しエレシュマは再び生体電気を飛ばす

ナオが顔を背けた時、何かが飛んでくる

青色の柄に水色の刃の剣に生体電気は吸い寄せられ、ナオは無事だった

「魔剣・リオニス!?ガルグイユ!なぜ貴女が邪魔をするの!?」

しかし、その方向を見ると立っていたのはカトレアとアランだった

「そういうこと、ガルグイユ

貴女はお嬢様にリオニスを託して、この私を止めてもらおうとした…というところかしら」

「エレシュマ、もう終わりだ

無意味なのはこの戦いだ」

エレシュマは不敵に笑い、翼を広げる

そして、音也の閉じ込められている魔力の檻へと向かう

「お嬢様は必要ですが、最悪勇者だけ連れ帰れば問題は無い

戦力を削いだ後でもゆっくりやればいい」

エレシュマは音也の閉じ込められている檻の前に行き、蹴りで檻を壊す

音也は驚き、尻もちをつく

「君は誰だ?」

音也はエレシュマに問いかける

「私は貴方と同族、この刻印が見えるでしょう」

エレシュマは封印の魔神の刻印がついた腕を見せる

その瞬間音也の瞳に救済と螺旋の瞳が浮び上がる

「君と俺は同族なのか?」

「そう、だから着いてきて」

音也が手を取ろうとした瞬間、アランが装備した手甲鉤のように手にはめる左右に刃が分かれたナイフの刃を正面に持ってくるとエレシュマの背後に周り、頭と首に向かって刺す

「貧弱な人間が!このまま叩きつけて…

な、抜けない!?」

「ああ、俺の全魔法力を込めてんだ

抜けてたまるかよ!」

魔族だったら全魔法力を込めてもギリギリ死亡することは無い、しかしアランは人間だ

つまりそれは…

「あ、ああ…(このままでいいはずがない)」

音也は言葉に出しているものと明確に違う意思があった

カトレアはアランにやめるよう伝えようとする

「やめろ!アラン!

人間が全魔法力を込めて生きていられるはずがない!」

「アランさん!止めて!」

サーシャも止めるが、アランは聞かない

アランは言う

「風の吹くまま流れるように旅をしてた俺が

お前たちと出会って命をかけるんだ、止めてくれるなよ」

「あ、あ…(思い出せ!早く!)」

音也の中で何かが思い出せと言う

しかし、それはまだわからない

「あと音也、俺が死んでも記憶戻らなかったら許さねぇからな!」

アランは涙を流し、俯きながら全魔力を解放する

大爆発を起こしてエレシュマを包む

「アランーーーーーーー!」

音也がアランの名前を呼ぶ、記憶の魔神による封印が解けたのだ

「馬鹿者めが!勇者を助けたいのはお前だけじゃない!

皆同じ気持ちだったのに!」

カトレアが涙を流しながら殴る

そう言うとアランの頭を抱えたエレシュマが飛んでいた

「そんな…無傷なんて…」

「強すぎる…!」

サーシャとナオは驚き、表情が強ばる

「正直、危なかったわ

無傷ではないし、でも脇腹に風穴をあけたからもう死んでるでしょうね」

エレシュマはアランを投げ捨てる

「アラン!俺なんかのために…!

馬鹿野郎!」

音也は記憶を取り戻したこと、自分のせいで相棒を失ったことに対して怒っている

救済の瞳、螺旋の瞳、髪はなぜエメラルドグリーンになっている

「あら、記憶が戻ったのね

それならまた封印すれば…」

エレシュマが封印の魔神から移植した腕を差し出す

しかし…

「柳月流剣術・羅刹斬!」

羅刹斬で切断する

そして、それは奥義の完成も意味している

(記憶を封じている間は無力で羅刹斬の完成なんて出来ないはず

まさか…相棒をやられたショックで完成させたというの?)

エレシュマは考えるが、音也は手を休めない

「戦闘中に考え事とは余裕だな

俺が攻撃の手を休めると思うか?」

次は水穿斬が飛んでくる

エレシュマは咄嗟に回避するが、斬撃は頬を掠めた

「人間にはどうしようもないやつだっている

それでも、アランは俺が変わっていくのだって受け入れてくれた!

それがあいつだったのに!」

音也は涙を流しながらエレシュマへと攻撃を仕掛ける

岩砕剣だ

エレシュマは斬られた腕を自身の腕と付けかえ、右腕でガードするが、腕の半分ほどまで刃が通る

クロス無しでここまでやられると思っていなかったエレシュマは音也を蹴り、後退りする

(クロス無しでここまで…やはり成長を促してしまったということかしら

空中戦ならば有利なはず)

エレシュマは翼を広げ空へと飛び立つ

「待て!

火竜よ!俺に全ての悪を焼き尽くす力を!

魔装クロス!ドラゴニッククロス・ゲオルギウス!」

音也の姿は以前のゲオルギウスよりも強くなっていた

竜鱗が腕に出現し、耳も竜族特有の耳になっている

髪はいつもの黒ではなく、エメラルドグリーンのままだ

(なんだあの力は…本当に音也なのか?

今の音也なら私を超えるほど強いだろう)

カトレアは口には出さなかったが、今の音也は自分を超えるほど強いと感じ取っていた

「2分…ドラゴニッククロスは2分しか維持できない

つまりその前に私が貴方を倒せばいい」

「ああ、やってみろ!

できるならな!」

音也はムラマサを納め、構える

エレシュマも無意識に音也の強さを感じとったのか

いつもより鋭く構え、二人の間には静寂があった

そして…

エレシュマの生体電気が強化され金色の光を放つ

「轟雷滅殺脚を超える技…雷霆滅殺脚

本気を出すわ

この技で倒せなかった敵はいない!

勇者、貴方はここで始末しなければならなくなった!」

(ここでは皆を巻き込んでしまう…

移動するしかない!)

音也は深紅の翼を広げ皆を巻き込まない森の上空へと移動した

「仲間たちに被害を出さないために…ね

一手遅れた時点で貴方の負けよ」

「俺が耐え切ればいい話だ

俺が■■なら耐えられる!」


第23話 決別の時 End

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異世界転生記 狐ヶ崎ナズナ @claudia_398

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