第1章 第22話 才能
前回までのあらすじ
エレシュマに記憶を封印された音也
その音也を守るためにアランは一人で鬼人衆へと立ち向かう
海鬼人・クラーケンと対峙するが、人間であるアかアランではまるで歯が立たず敗れかける
アランの騙し討ちでクラーケンの触手を切断することに成功するも、クラーケンの怒りを買う
クラーケンはアランに向かって毒針を飛ばし、麻痺させる
そこにカトレアが現れ、コキュートススラストでクラーケンの口を凍らせる
クラーケンのとどめをアランに任せ、これを倒す
アランはさすがに疲労が溜まり、休憩をする
カトレアは怒りをあらわにし、鬼人衆を倒す決意をした
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カトレアは槍を握る力を強め、鬼人衆と向かい合う
残る鬼人衆は獣鬼人・ヘルハウンド、龍鬼人・ガルグイユだ
「お嬢様が相手とはな…ヘルハウンド余計なことはするな
お前では相手にならん」
「ガルグイユ、止めるな!
クラーケンがやられたのだ!
最早お嬢様が相手でも手加減なし!
確実にこの場で仕留めてくれる!」
ガルグイユの制止を振り切り、ヘルハウンドはカトレアに向かう
ヘルハウンドは息を大きく吸い込み、口を開ける
カトレアは咄嗟に防御の姿勢をとる
「くらえ、カトレア!
フレアブレス!
我が炎は最強!この炎を超えるものなど無し!」
カトレアの体が炎に包まれる
ガルグイユはヘルハウンドの行動に半ば呆れている
エレシュマの命令を無視し、カトレアを再起不能にするなど…
そう思った瞬間、ヘルハウンドが吹き飛ばされている
「…貴様の炎が最強?
残念だが貴様の炎は弱い
カレンの炎と比べたらぬるすぎる」
カトレアは無傷で、火傷すらしていない
「妹様の方がこのオレよりも強いだと?
笑わせるな!
オレの剛力で砕いてくれる!」
ヘルハウンドはカトレアに掴みかかるがカトレアは握力で手を握り砕く
「ぎゃあああああ!」
「私に手を握りつぶされてる程度で剛力を語るな
ナオの方が強い
貴様程度が調子に乗るな!
私は今機嫌が悪い、この一撃で仕留める」
カトレアは槍を手に取り、投げつける
その槍は喉へと突き刺さり、ヘルハウンドは倒れた
「さあ、かかってこい
ガルグイユ」
カトレアはガルグイユに挑発する
ガルグイユは剣を構える
その剣は銀色に輝く不思議なレイピア
そして…
「お嬢様、本当はこうしたくなかった
ですが、仕方ありませんね
そしてもう一つ、貴女に槍の才能はない」
(速い!)
凄まじい速度でカトレアまでの間合いを詰めてきた
凄まじい突きの連打が高速で放たれる
カトレアの鎧に傷がつき、破片が飛び散る
ガルグイユは突きを止め、カトレアに言う
「やはりそうだ
貴女には槍の才能がない
真に才能があるのは剣だ」
「そんなことは最初からわかっている
ガルグイユ、私が槍を使う理由はお爺様から教わったからだ
剣だけでは切り開けないと悟ったから槍を使う」
ガルグイユは剣をカトレアに見せる
「この剣に見覚えはありませんか?」
カトレアは目を凝らし、剣を見る
すると、カトレアは気づいた
「魔剣・リオニス…!
ガルグイユ、何故お前が!?」
「これはエレシュマ様から授かりました
元々はハデス翁の物だったことも知っています
我々と共に歩むならばこれを返還しようと思いましたが、結果はそうもいきませんでしたね」
ガルグイユは高速の突きを再度繰り出す
カトレアは何発か食らって目が慣れたのか一瞬の隙を逃さず
「そこだ!コキュートススラスト!」
コキュートスと回転する風の複合技
クラーケンを凍らせたものを再び放つが、捉えたのはガルグイユの投げつけた兜部分だった
「お嬢様、貴女では私を捕えることは出来ません
その兜はあえて装備から外し、狙うように仕向けただけのこと」
(ガルグイユ…エレシュマの鬼人衆の中で最強の鬼人
エレシュマまで無傷でいようと思ったがそれも無理か)
ガルグイユは構え直すと語る
「本来私に剣の才能はありません
お互いに才能がないもの同士の戦いということです
そしてこれはその中で見つけた技」
ガルグイユはリオニスを正面で構え、奥義の姿勢に入る
「リオニス、その力を解放しろ!インビジブルハーケン!」
ガルグイユが剣を振る
それは空を斬るが次の瞬間、カトレアの鎧に亀裂が走る
見えない斬撃
「…ガルグイユ、私はエレシュマと戦うまで力…魔法力を温存しようとした
しかし、それももう終わりだ」
カトレアは槍の構えを解除する
カトレアは鎧を外し、覚悟を決める
「ガルグイユ、終わりにしよう
これで決まれば私の勝ち、決まらなければお前の勝ちだ」
「そうですか…
お嬢様、せめて苦しまないよう仕留めて差し上げます」
ガルグイユは高速の突きを連打する
カトレアは全て回避する
あの短時間でガルグイユの癖を見抜き、回避に専念した
「さっきも言ったように私は温存すること諦めた
私の魔法力を集中して最後の一撃を放つ」
「なるほど、この短時間で全て回避出来るようになるとは…甘く見ていました
お嬢様、正真正銘これが最後の一撃です!インビジブルハーケン!」
カトレアは槍を持ちインビジブルハーケンを受ける
カトレアの持つ魔神槍が中央から半分に砕ける
ガルグイユの勝ちかと思われた次の瞬間、折れた槍から魔力の塊が放たれる
「かかったな!ガルグイユ!
お爺様私に力を!
アビスフレア!」
アビスフレアはガルグイユの肌を焦がす
カウンターとしてカトレアは魔力を魔神槍に込めていたのだ
「お見事…」
ガルグイユは地に伏した
結果はカトレアの勝利だった
「おい!こいつがどうなってもいいのか!」
その声はヘルハウンドの声だった
ヘルハウンドはギリギリで生きており、アランを人質にしている
「カトレア!俺はどうなってもいい!
こいつをぶっ倒してくれ!」
「小僧が黙れ!ガルグイユを倒したのは素晴らしいと褒めてやる
だが、いくらあのお方の娘だからと言え、貴様を野放しにする訳にはいかなくなったわ!
武器を捨て、オレに命を差し出せ!
そうすれば小僧の命だけは助けてやる!」
「カトレア!俺に構わねぇでこいつを倒してくれ!
頼む!音也の為にも!」
カトレアは折れた魔神槍を置いた
「アラン
お前のことは放っておけない
音也を助けるのはお前だ」
「馬鹿野郎!お前が必要なんだよ!
俺なんかのために負けねぇでくれ!」
アランはカトレアに言うが、カトレアは既に覚悟を決めた
それを見たヘルハウンドはカトレアを見下し、笑う
「愚かな奴だ!
人間如きにその命を賭けるなど!
望み通り冥界に送ってくれるわ!」
ヘルハウンドが武器を取り、カトレアの頭目掛けて攻撃しようとする
その時、レイピアが飛んでくる
「誇りある鬼人衆を辱めるな
愚か者が」
「な、何故…」
ヘルハウンドの脳天にリオニスが刺さり、絶命する
「ガルグイユ、何故私を助けた?」
「お嬢様…貴女のためでもありますが、誇り高き鬼人衆の名を貶めるような行為は許せなかったのです…
私は死ぬことは無いでしょうが…今は傷が深い
貴女にこのリオニスを託します…
どうか、エレシュマ様と…あのお方を救ってください」
「ああ、わかった
お前の代わりに私が…」
カトレアがリオニスを持つと形が変わる
青い刀身に水色の刃、鎧も専用の物へと置き換わる
青い鎧、前回のビキニアーマーよりも重厚な印象を与えるものとなっている
「リオニスもお嬢様を選んだようだ…
どうか…」
そこまで言った時ガルグイユの意識は途切れかける
アランはガルグイユの話を聞いてる時に泣いている
「…アランと言ったか…
お前のような人間は初めてだ…
エレシュマ様もお前を見れば何か変わるかもしれん…」
-side 音也-
音也を守るため、音也は魔力で作った檻に閉じ込められていた
なぜ自分が閉じ込められているかわからない
「鬼人衆が来ない…?」
「まさか、アランクンは一人で足止めをして…」
サーシャとナオが話をしている
そして、サーシャは突然笑いだし
「あは!ははははは!」
「サーシャ、どうしたの!?」
ナオがサーシャに聞くが、答えず
サーシャは涙を流し、胸中でアランに謝罪する
そして、覚悟を決めた
(あの時、貴方を叩いたこと許してくださいアランさん
覚悟を決めました
エレシュマが相手だからって私は逃げない!)
「私がエレシュマの攻撃を防ぐわ
私が全力で防御すればエレシュマの攻撃と言えど耐えられる
攻撃の直後、ナオに回復をしてもらう
アランの覚悟、美しいから私も戦う」
シャルロットがした提案は捨て身だ
しかし同時に、この中で一番耐久力があるのもシャルロットだ
それをナオが回復し、エレシュマを消耗させる作戦だ
捨て身であるが最も有効な作戦と考えていいだろう
(エレシュマ、この戦い必ず勝って勇者様と明日に進むわ)
第22話 才能 End
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