第1章 第11話 二の剣

前回までのあらすじ

オーレンの宿屋でナオの目覚めを喜ぶ音也たち

音也とサーシャ、アランは再会を喜び

カトレアとシャルロットは自己紹介をする

音也から封魔のブレスレットを渡され、魔獣化はピンチの時以外使うなと言われ、ナオ本人も使わないと誓う

その後、宿に柳月という男性が訪ねてきて強者の気配を感じると自分の剣技を教えるため、音也に頭を下げる

秘剣・鬼神楽を教えるため、鬼神楽を音也に見せると音也は素早く分析、正解へと至る

音也と柳月は実際に木刀で組手を行い、2人ともその強さを知るに至った

そして音也は柳月流剣術の力の剣技、岩砕剣を1日にして習得する

柳月は次の剣技、速度の剣技と鎧すら穿つ水穿斬、鎧通しを教えることとなった

-オーレン滝の洞窟-

暗闇の中、音也と柳月が木刀で組手をする音が聞こえる

「ふむ…ここで5分ほど試しにと思ったが

さすがですな音也殿

最初は全くわたしに当てることが出来なかったのに今ではもう百発百中と来た

闘気を読めるようになるまでは熟練の戦士でも10日はかかると言うところ

やはり音也殿は天才という他ない」

「いえいえ、柳月さんの指導が良いからですよ」

音也は謙遜する

柳月はというと岩場に腰かけ松明をつける

木刀を置き音也を呼ぶ

「音也殿の成長速度は申し分ない

そして、このままの速度で行けばこの柳月すら超えるだろう

水穿斬、鎧通し、そして最後に闘気剣・羅刹斬

三位一体の奥義・鬼神楽を習得していただく」

音也はひとつ疑問を抱いた

「羅刹斬…闘気の剣技

波の立たぬ静かな海面というのはどういう意味ですか?」

柳月は図を使い説明をする

「凪のように闘気を一時的に完全に抑え、解き放つことで不定形の悪鬼羅刹すら穿つ

これこそが羅刹斬ということですな

それはそれとして、そろそろ昼時

飯にしましょう音也殿」

柳月は竹皮を2つ取り出し音也に1つ渡す

握り飯はまだ少し暖かく、米の良い香りがする

「ありがとうございます

いただきます」

音也が握り飯を口に入れ、噛むと米粒が少し潰れているが程よい塩味が口に広がる

「申し訳ない、妻に先立たれ

剣の修行に没頭するあまり料理というものはあまり得意ではないので口に合わないかったら…」

ここまで柳月が言うと音也は一呼吸置き答えた

「いえ、父を思い出す味でした

俺には母しかいなかった

父は行方不明で今もどこにいるかわからない

そんな父が握ってくれたおにぎりと味が似ています」

柳月は小声でそうかと言い微笑んだ

そして少しの休憩の後、柳月は滝の洞窟奥地へと案内し、奥に眠る番人相手に修行するよう伝える

その番人は魔物だった

海竜とサイクロプスであるが人語を理解しているのか柳月の話を黙って聞いている

そして、2匹は音也へと向かってくる

「音也殿と言ったな!我ら2人から生き延びてみせよ!」

海竜がそういうとサイクロプスも続いて

「鎧通しと水穿斬を使えなければ命は無いと思え!」

音也は間一髪2匹の攻撃を躱す

しかし、2匹とも並の教団員より強い

水穿斬と鎧通しが使えなければ命がないというのも嘘ではないだろう

海竜の口から高水圧のブレスを吐く

音也に直撃したと思われる次の瞬間…

「柳月流剣術・水穿斬!」

水のブレスを穿ち闘気で出来た真空波が海竜の上顎に傷を与える

「み、見事…!」

(なんと!流水の構えなしに水穿斬を放つとは…

やはり凡夫などでは無い!

音也殿は才に溢れた人なのだな

さぁ、鎧通しもわたしに見せてくだされ!)

海竜は音也を賞賛し、柳月も音也を賞賛しその顔はまるで生徒の成長を期待する教師のようになっていた

音也の元へサイクロプスが向かってくる

鎧に囲まれ普通の剣技では通らないだろう

「水穿斬を習得するとはなかなかやるな!

だが、鎧通しが使えなければ同じこと!

この私を見事に討ってみせよ!」

「ああ、なんとなくさっきので感覚がわかった

しかし、お前良い奴だな」

「茶化すな!

鎧通しを使えなければ命は無いのだぞ!」

サイクロプスは手に持つ棍棒を思い切り叩きつける

それは音也に直撃した

しかし次の瞬間、音也の体は水のように液体になってしまった

「流水の構えで避けた

お前の負けだ」

(なんと!瞬時に流水の構えで受け切り、無効化

そして鎧通しへと持っていくのか!

どこまで強くなるのだ音也殿!)

「鎧通しは羅刹斬の1つ前に覚える技!

そう簡単に…」

音也はムラマサを正眼の構えから霞の構えへと移行し

「柳月流剣術・鎧通し!」

サイクロプスの鎧をすり抜けるような突き

その一撃を受けたサイクロプスは

「ぬうぅぅぅ…見事なり!恐れ入った!」

音也はムラマサを鞘に収め、柳月の方に向き直る

柳月は拍手をし音也を称える

「見事ですな音也殿

残る剣は…」

そこまで言いかけた時、滝の洞窟最深部にカトレアとアランが走ってくる

「大変だ音也!

柳月さんの娘が教団員に!」

アランがそう言ったかと思うと

柳月は途端に走り出す

その顔は侍ではなく1人の娘を守る親の顔だった

-オーレン郊外・深淵の森-

「深淵の森に来いって言ってたぜアイツら!

人質なんか取りやがって!正々堂々と来やがれってんだ!」

アランが怒りを顕にしていると突如斬撃が襲いかかってくる

それは柳月のものだった

柳月は刀を構え直し音也に向かってくる

音也もすかさずムラマサを構えるが、一手遅れた

「音也殿、御免!」

「一体どうしたんだ柳月さん!

操られているのか!?」

「違う、これはわたしの意思だ!」

柳月の技は確かに本人のものだ

そして、操られている訳でもない

「柳月殿、貴方は気高き武人

何故このようなことを!」

「カトレア殿、これも全て我が娘

時雨の為…

どうかわかってくだされ!」

柳月はあくまで音也と戦っている

そしてその背後には

「そうだ、人間同士潰し合え!

我らの驚異となる人間は早々に退場するが良い!

柳月!お前の弱点はこの娘よ!」

高笑いをしてる教団員は屍鬼軍団のようだ

ゴーストタイプの体ではあるが鎧の中に入っている

「貴様…!」

「おっと、カトレアよ

俺様に手を出せばこの娘の命はねぇぞ!」

「…卑怯者め

かつてそれで魔界を追われた罪人は違うな

エルダーゴースト・レヴィ」

カトレアと教団員は知り合いだったようでレヴィと呼ばれたゴーストは鎧を脱ぎ始める

「この森は昼でも隔絶されたように暗い

我々ゴーストには最適の場所だ

だからこの鎧はもう必要ない

帰る時以外な

柳月!音也を殺せ!」

「貴様に指図される謂れは無い」

柳月は刀を構え、音也と打ち合う

(ふん、駒としては使えんな

用済みになったら娘と共に殺すか…)

レヴィは柳月を始末する考えをしている

「全てを打ち砕く魔獣の力をここに!魔装クロス!ビーストクロス!」

音也はナオとのクロス

ビーストクロスを発現させたがそれでも柳月とまともにやりあうのは厳しいだろう

「音也殿…⬛︎⬛︎⬛︎はくれないだろうか」

(柳月さん…)

「カトレア!コキュートスだ!

辺り一面を凍らせてくれ!」

音也はカトレアに指示をした

そして…

「あ、ああ!」

「次はフレイムだ!」

「わかった!」

音也はカトレアに2種類の魔法を指示し、霧を発生させた

それは目くらましではなく…

「目くらまし程度でこの状況を脱したと思うなよ!」

レヴィは声を張上げて言うがそれが仇となった

「秘剣・鬼神楽!」

「ゴーストを切断出来るわけねぇだろうが!」

「初めからお前など切っていない」

時雨を拘束していた金具が壊れ

高速が解かれた

「初めからこれが目当てだったのだからな」


第11話 二の剣 End

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