第1章 第10話秘剣・鬼神楽

前回までのあらすじ

オーレンの宿屋で1人の男性から霊峰ハデスにて魔物が住み着いたから追い払ってくれと頼まれる

音也たちは霊峰ハデスへと向かうが霧に阻まれ、合成魔獣・オルトロス、ケルベロスとの勝負となる

オルトロスは音也たちと戦い不利と見るにすぐ逃走に移り、ケルベロスはサーシャとシャルロットを倒すために逃げずに戦いを挑んできた

そこに暴走状態のナオが現れケルベロスを蹴りつけ、踏み潰していた

毛が逆だって怖がっていることをサーシャが見抜き、頭を撫でながらブローチを嗅がせることで元に戻った

最後に男から魔物とグルだったと言われ、音也は突き放された

その背中には哀愁が漂っていた

-オーレン大橋-

オーレン大橋で剣同士が打ち合う音がする

そこに居たのは二人の男だった

「お若いのになかなかの太刀筋ですなパーシヴァル殿」

「そう言いながら貴方もよく受け流す

柳月殿」

パーシヴァルと呼ばれた男性は若く、顔立ちの整った男性

髪は赤色で短髪、剣は両刃で刻印のあしらわれた剣だ

柳月と呼ばれた男性は初老の男性で髪は少し白髪混じりの男性だ

日本刀を持っている侍のようなイメージだろう

「パーシヴァル殿、我が秘剣受けていただく!」

「よろしい、こちらも相応の技をお見せしよう!」

2人の闘気は最大限まで上昇する

そして…

「秘剣・鬼神楽!」

「ブラストスラッシュ!」

二人の技がぶつかり合い服が少し破ける

パーシヴァルは肩の部分、柳月は袖だ

「やはり我が秘剣を見せるにふさわしい相手だった

感謝いたしますぞパーシヴァル殿」

「こちらこそ

貴方が本当に俺を殺す気ならばもう俺はこの世にいないでしょう」

2人派遣を収め互いに頭を下げる

そして、オーレン大橋の下で柳月は釣りをして釣れた魚を焼いている

「さ、パーシヴァル殿

こんなものしか用意できなくて申し訳ないがお召し上がりください」

「いえいえ、このようなもてなし

悪いですよ」

パーシヴァルは遠慮するが柳月は釣った魚を焼き続ける

「騎士は身体が資本なのでは?

遠慮なさらず」

「ではお言葉に甘えて」

柳月とパーシヴァルは談笑しながら魚を食べる

ライバルであり、戦いが終われば友のように過ごす

そして、柳月は帰路に着く

娘の待つオーレンへと

-オーレン旅人の宿屋-

勇者一行はナオの目覚めを待った

霊峰ハデスで見つけたナオ

合成魔獣・ケルベロスを倒したとはいえ身体中怪我だらけだ

カトレアが治療しているが骨に少しヒビが入っている所があるなど相当無理していたことがわかる

(骨の損傷、身体中の傷を見るに教団員と何回か戦闘をしているのだろうな)

「ん…君は…?」

カトレアが治療をしているとナオが目を覚ました

音也たちも近くで見守っていたことから、喜びあった

「私はカトレアだ

お前のことは知っている」

「そっか…なら話は早いね」

「ナオちゃん!」

「サーシャ、ごめんね」

ナオは謝るがサーシャは首を横に振る

それは許さないということではなく、戻ってきてくれてありがとうという意味だろう

「ま、ナオが目覚めたってんならやることは1つだよな」

「ああ、そうだな」

音也とアランはナオに装備品を渡す

ブレスレットだ

「これは?」

「封魔のブレスレット、魔獣化を少しだけでも抑えられると思って買ってきた」

音也はそう説明する

ナオのことを気遣って買ってきたのだろう

ナオはそれだけでも嬉しかったのだろう

少し涙目になっている

「初めまして、ナオ

私はシャルロット

魔導人形のシャルロットよ

よろしくね」

シャルロットは軽くお辞儀をし、ナオに挨拶した

それに対しナオは元気よく挨拶する

「こちらこそよろしくシャルロット」

皆が少し落ち着いてから音也は言った

「ナオ、魔獣化は必要な時以外もう使わないでくれ

俺たち全員がピンチに陥って壊滅するような時、それは必要な時だ

だが、それ以外は使わないと約束してくれ」

「うん、約束する

わかった…」

ナオの目も本気だった

魔獣化はしないと言う決意だった

それから旅人の宿屋に一人の男が尋ねてきた

初老の男性でまさに侍という風貌

「柳月だ

今年も美味い野菜が沢山取れたから如何かな?」

「柳月さんいつも悪いね

この宿屋に野菜をくれてさ」

「ここはオーレンに必要な宿だ

野菜の一つや二つ安いものだ」

柳月は店主に野菜を渡している

一つや二つという量では無い、カゴいっぱいに渡している

「むっ!?この気配は…

店主よ、この宿に今旅人はいるか?」

「あ、ああ…居るよ

勇者様が」

そこまで言いかけた時柳月は階段を上がっている

柳月は音也たちのいる部屋をノックした

そして…

「我が名は柳月、勇者殿

返事をしていただきたい」

柳月はドアの前から名を名乗り音也を待つ

「なんでしょうか?」

音也は姿を出し、名を名乗る

「柳月さん、俺は相良音也といいます」

「音也殿、貴方は我が秘剣を覚えるにふさわしい男だ

故に稽古をつけさせてくれ」

皆目が丸くなっている

普通は逆だ

音也の方から頼むならわかる

だが、柳月の方から頼んでいるのだ

音也はそれを受け入れた

「俺はもっと強くならなければいけない

だから、教えてください!」

柳月は音也を外へと案内した

皆が見守る中、柳月と音也は構える

とはいえ柳月と音也は練習用の木刀だが

「我が秘剣、お見せしよう!」

柳月が構えると闘気が練られていく

柳月の木刀は緩やかな動きで曲線を描いている

そして…

「我が刀を抜く刹那…音も光も置き去りにする

朝露すら斬られたことを知らず…

秘剣・鬼神楽!」

柳月の刀が最も下に行った時、急速に直線を描き音也へと向かう

その剣は緩急の具合により、まるで刃が伸びたかのような錯覚すら覚える

だが、音也は分析した

「柳月さん、この刀

いや、刃が伸びたように感じたのは真空波…

違う…剣圧と闘気である程度の距離、中距離程度離れていても問題なく当てるのですね」

「なんと!この一撃でここまで分析するとは

勇者の名は伊達では無いということか!

流石だ音也殿、わたしの目に狂いはなかった」

「この速度ならばならば7日もあれば習得できるであろう

柳月流剣術を習得した後、秘剣・鬼神楽を改めて覚えていただく」

柳月は木刀を構え、音也と打ち合う

訓練は夜まで続いた

柳月と音也の木刀にはほとんど傷がない達人同士で打ち合ったかのように

「音也殿の剣、洗練されて迷いがないな

素晴らしい

これは教えがいがある

まさか初日にして力の剣技である

岩砕剣を覚えてしまうとは」

「いえ、俺の才能など大したものではないですよ

柳月さんの剣はさすがですね」

「ははは、謙遜なさるな

音也殿の剣技は我流ながら素晴らしい

ここまで才があるのだ

明日は流水の構えから水穿斬、鎧を持った相手に有効な鎧通しを覚えてもらうとしよう」

柳月は満足そうに笑いながら帰っていく

(柳月さん強いな

俺もあの境地に立ってみたい)


第10話 秘剣・鬼神楽 End

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