第1章 第9話 再会の刻
前回までのあらすじ
ウェンディの大輪とセレネクリスタルを用いたカトレアの強化エクスキュアにて、音也の毒を解毒した
カトレアたちは音也復活前にヨルムンガンドに挑もうとするが、新たなる[[rb:魔装 > クロス]]・ドラゴニッククロスを身につけた音也が復活し、戦闘に参加した
ヨルムンガンドにある心臓3つと脳を潰さないと倒せないことを伝え、1人ではなく全員の力で勝つと音也は言う
現時点での全員の最強技を出し何とか倒すことが出来たが教団は新たなる合成魔獣を用意しており、それらがいつか自分の前に現れるのだろうと音也は予想していた
-オーレン旅人の宿屋-
音也たちは前回のヨルムンガンドを倒した疲れからか半日以上眠っていた
目覚めて宿屋の受付前に行くと宿屋にいた一人の男性客が音也に向かって声をかけてきた
「あんたあのでかい蛇を倒した人か?」
「ああ、そうだが」
男は頭を深々と下げて音也に向かって言う
「蛇を倒したアンタの腕を見込んで頼みがあるんだ
俺たちの山に魔物が住み着いちまって、それを何とかしてほしいんだ
お礼はする」
音也が返事をする前に仲間たちは顔を見合わせる
そして…
「魔物が住み着いたのはどの山だ?」
音也の答えに男は顔を上げオーレン山岳地帯の地図を出し、オーレン山岳地帯で一番高い山・霊峰ハデスを指差す
音也たちは支度を整え、霊峰を目指して歩く
ヨルムンガンドがでてきたせいか魔物はほぼおらず、霊峰までは遠い事が唯一の懸念点となっているだけである
「霊峰ハデスか…」
カトレアが口を開く
「その名前に何かあるの?」
それに対し、シャルロットが聞く
カトレアはその問いに対し一呼吸おき
「…ハデスは私のお爺様だ」
全員が驚き顔を見合わせる
「お、お前ハデスって言えば冥府の魔神ハデスじゃねーか!魔神の中でも神話の存在って言われてるあのハデスだぞ!?御伽噺じゃねーのか!?」
アランはハデス名前を知っていた
御伽噺や神話の存在と呼ばれている冥府の魔神・ハデス
その孫がカトレアだと本人が語る
「ハデスお爺様は実在している
私がその証人だ」
「まぁそりゃあ、あの強さ見たら信じるしかねぇよな」
アランは納得している
音也は特段驚いている様子がない
魔神という種族をよく知らないからだろうか
「お前は驚かねぇのかよ音也」
「……あぁ」
少し間を置いた返事ではあるが考え事でもしていたのだろうか
音也は合成魔獣が出てきてから何かを考えてるようなことが多くなった
おそらく次の合成獣についてとナオのことだろう
3時間ほど歩くと霊峰ハデスの麓に着いた
魔物はここまでほとんど居なかったが霊峰の麓に着くなり魔物が現れた
獣系の魔物が多く、山の頂上にいるような大型の魔物まで飛び出してきた
そして音也たちに向かって走ってくるが…
音也たちを見るなり脅えて逃げてしまう
「なんなんだ一体…」
「私たちが強くなったってことですよ
きっと!」
驚くアランに対してサーシャは自信満々に言うが
それを否定するようにカトレアは言う
「違う、私たちの匂いで脅えたんだ
さっきの魔物はイビルビースト、獰猛で決して獲物から逃げ出すことは無いはずだ
それでも逃げたのは獣の本能
勝てないと察したから逃げたんだ
この山の魔物は一体どんな魔物なんだ」
カトレアの言葉にサーシャは唾を飲む
先程の大型の獣より強い魔物
一体どのような魔物だろうか
音也たちが霊峰を歩いていると霧が深くなってくる
そして音也が振り返るとサーシャとシャルロットが居ない
「サーシャ!シャルロット!どこに行った!?」
音也が声をかけるが返事は無い
「ここは霊峰
特殊な魔力で声や姿が見えないようにされているのだろう」
カトレアは魔力探知をかけるために魔法陣を書くが反応がちらばり意味が無い
アランはこちら側にいるが心配は増えるばかりだ
その時近くから足音がする
それは人間のものでは無い
「…武器を取れ、来る!」
カトレアがそう言うと雷が音也たちに向かって飛んでくる
音也がムラマサで防ぐと雷は吸収されていく、音也の魔力が吸収しているようだった
「今のを防ぐとはやりますね」
「誰だ!いきなり何しやがる!」
霧で隠れていた姿がようやく見える
それは獣と屍鬼軍の魔物が混ざったような見た目だ
「合成魔獣・オルトロス
勇者御一行を倒すために来ました」
「喋る合成魔獣か、だが相手にとって不足は無い
荒れ狂う風よ!眼前の敵を切り裂く華竜の加護を!
敵は空を飛べないと考え、音也は華竜の聖女・ウェンディの力を借りた
カトレアは雷属性が苦手ではあるが戦わなければならないと槍を構える
アランもブーメランを構えオルトロスの攻撃に備える
オルトロスの口から雷が飛んでくるがアランがブーメランを避雷針代わりにして防ぎ、音也が向かっていく
「風よ!敵を切り裂く刃となれ!エアロカッター!」
音也のエアロカッターはギリギリのところで躱された
血は流れているが大したダメージでは無い
「今日は様子見ですがここまでやるとは…
ではまたお会いしましょう」
「待て!」
音也は逃がすまいと追いかけるが霧の中に紛れ消えてしまった
「逃がしたか…
次は必ず倒す」
音也が決意を固めるとカトレアは
「シャルロットたちを探す」
「この霧でどうやって探すんだよ」
カトレアは槍を構え、風の魔力を纏わせる
だが、霧は吹き飛ばない
「これは動かない方がいいな」
-Side サーシャ-
「勇者様たちどこに行っちゃったんでしょう
ウインドでも吹き飛ばない霧なんて…」
「…なにか来る」
シャルロットがそう言うとサーシャに向かって氷柱のように鋭い氷がものすごい速度で飛んでくる
「まさかカトレアじゃないでしょうね!?」
サーシャのその問いに答えるかのように霧の中の影は返事をする
「違うわ、合成魔獣ケルベロス
勇者がいないならここで死になさい」
ケルベロスが手を叩くと辺りに氷が現れる
先程の氷柱のような氷だ
シャルロットがサーシャの前に出て糸を振るう
すると氷が魔力を切断されたかのように切れる
「マジックフィル…魔力を切断するための糸よ」
「魔導人形がここまで出来るなんてね
オルトロスは逃げたけど私はあんたたちを倒すまで逃げないわよ」
シャルロットは再び糸を構える
「サウザンドフィル…」
シャルロットは網目状の糸を編み込みケルベロスへと飛ばす
ケルベロスの左腕は切断されるがすぐに再生しようとする
「その程度で合成魔獣が倒せるとでも…」
「思ってないわ
だから"網目状"なの」
ケルベロスの左腕は再生出来ない
と言うよりも再生が阻害されている感じだ
細かく切断されたので再生まで時間がかかる
「この程度で私が!」
シャルロットは次の糸を用意し、ケルベロスにと向かって飛ばそうとした時上空から何かが落ちてくる
それは…
「うぅぅぅぅ…!
「ナオちゃん!」
ナオはケルベロスを蹴り倒し、踏みつけている
まるで獲物を狩る狼のようである
(あれがあの優しいナオちゃん…?
ん?毛が逆立ってる…?)
サーシャはナオにゆっくり近づく、シャルロットは思わず制するが、それでも近づいていく
「サーシャ危ない!」
「毛が逆立っているのは怖がってるから
だからゆっくり落ち着いて…」
サーシャはナオの頭を撫で胸のブローチを外し、ナオに嗅がせる
すると…
「サー…シャ…?」
ナオは元に戻っていき、気絶するように眠る
それに呼応するかのように霧が晴れる
ナオを守るために霊峰が霧を出していたかのようだ
「サーシャ、シャルロット
無事か?」
音也とカトレア、アランがサーシャたちの元に駆け寄ってくる
音也はナオを見るなり一言
「おかえり、ナオ」
ナオを抱え、麓まで下山すると宿屋で会った男がいた
すると男は音也を見るなり言い放った
「あんたこの魔物の仲間だったんだな、金はやるからもう俺に姿を見せねぇでくれ」
男は音也に金を投げつけるように渡し、その場を去る
「何よ!問題は解決したってのにその態度は!」
「やめろサーシャ
俺があの人だったら同じことをしてしまうかもしれない
ナオが帰ってきたんだ
喜ぼう」
音也はそう言ってサーシャを宥める
音也はそれ以上何も語らなかったがその背中には哀愁が漂っていた
第9話 再会の刻 End
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます