第1章 第8話 竜の魂
前回までのあらすじ
サーシャを庇い、毒に侵されてしまう音也
勇者の加護で浸食自体は遅れているが、それを超えるために必要な道具を探しに行くこととなった
シャルロットは単身、セレネの元へと向かう
再び現れたチェスターに恐怖を抱き戦えなくなるもカレンとナナの助太刀により窮地を脱する
戦闘後、セレネからセレネクリスタルを受け取りシャルロットは音也の元へと向かう
そして、セレネは終極の魔神から罰を受けるも音也に力を託して倒れる
-オーレン・旅人の宿屋-
サーシャとアラン、シャルロットは時間差はあったもののほぼ同時に帰ってきた
その手にはウェンディの大輪、セレネクリスタルがある
「よくやった
これから解毒を始める」
カトレアは音也の左右にウェンディの大輪とセレネクリスタルを置くと魔法の詠唱をする
「我が魔力の全てを捧げ、この者の毒を癒せ!
エクスキュア!」
白い光が音也を包む
体からは毒が消え、音也の苦痛に歪んだ表情が安らいだ顔になる
「毒が消えたな!」
「やった!これで勇者様復活ですね!」
アランとサーシャは喜び、シャルロットも笑顔になる
だが、カトレアだけは喜んでいない
その理由は先程、ウェンディの大輪とセレネクリスタルで強化したエクスキュアで魔力を全て使ってしまったからだ
「私の魔法力が切れる
コキュートスとストームフォースが消えて
やつが動き出す!」
カトレアはそう言い放ちポケットから魔法力の詰まった結晶を出す
それを砕き、流れ出た紫色の液体を体にに浴びせる
「コキュートス3回分は回復した
お前たちも使え」
カトレアはサーシャたちに魔法力の詰まった結晶を投げ、同じように砕かせて回復させる
すぐさまヨルムンガンドの元へ向かう
音也不在だがここで止めなければならない
「キシャアアアアアア!」
ヨルムンガンドの元へと向かうと既に復活し動き出している
動けない間も周りは見えていたようでカトレアに明確に敵意を持っている
「流石にそう来るか
だが、勇者のいない今ここで止めるしかない!
お前たち覚悟はいいか!?」
「聞くだけ野暮だぜ
そんなもんとっくにしてるからよ!」
「聞かれるまでもないわ!」
「大丈夫、行くわ」
皆が武器を構え、ヨルムンガンドが動き出した瞬間、宿から音也がここまで高速で移動してくる
復活するにしても移動するにしても早すぎる
「待たせたな」
そう言って音也は姿を見せる
その姿は普段とは異なり、風を纏っている
細部は異なるが、まるで先程会ったセレネに似たような姿になっている
「音也、もう大丈夫なのか?」
「ああ、この新しい力・ドラゴニッククロスで治りも早くなったしな」
アランの質問に音也は返す
そして…
「合成魔獣、世話になったな
借りは返させてもらう!」
「勇者、勝てるのか?」
カトレアは聞く、それに対し音也は
「勝つさ、俺たち全員の力で!」
皆その言葉で士気が上がり、ヨルムンガンドへと向かっていく
「我が纏うは全てを滅する火竜の力!
音也の姿は変化し竜のようにとがった耳、背中からは火竜の翼、尻尾が生えておりその首には竜の鱗が出ている
「この変身は保って3分だ
それまでにやつの心臓3つと脳1つを同時に潰す」
「その心臓はどこにあんだよ
脳みそはだいたいわかるがよ」
アランの質問に対し、音也は返す
「心臓は中心部に1つ、背部に1つ、尻尾に1つある
それを俺たち全員で潰す」
あいよとアランは小さく返事をし、サーシャと共に尻尾の方へと向かう
1人では破れないと判断したのだろう
それに2人は身軽だ
攻撃範囲の狭い尻尾の方が何かとやりやすいだろう
「キシャアアアアアア!」
ヨルムンガンドは尻尾を揺らし、アランたちに攻撃をする
「おっと、暴れんなよ
大人しくしてくれねぇかなぁ!」
アランは尻尾にブーメランを投げつける
多少切れて血は出るが完全には切断できない
「あらら…やっぱ俺の腕力じゃダメか」
「アランさん!」
「おっとあぶねぇ!」
ヨルムンガンドは尻尾を叩きつけてくる
それをアランは間一髪で回避する
全長約50mの蛇が尻尾を叩きつけるとなるとその火力は絶大だ
地面が大きく抉れている
「やべぇな…食らってたらひとたまりもなかったぜ」
(勇者…いや、音也
翼を手に入れたんだな
その紅の翼、良い翼だな
必ず仲間を守るために使う時が来る)
カトレアは空中からヨルムンガンドの背部に周り心臓の位置に取り付く、シャルロットは中心部に潜り込み人形を用意する
音也は空へと飛び脳の位置まで行く
「キシャアアアアアア!」
ヨルムンガンドは飛行している音也へと毒を吐きかけたり、噛み付こうとするが全て避けられる
その飛行能力の高さは今日初めて飛んだとは思えないほど高い
そして…
「ゲオルギウスもあと1分程度しか保たない
決めるぞ!」
「「ああ!」」
「はい!」
「わかったわ」
全て同時に潰す、そのための選択は究極の一撃をぶつけること
「最終にして究極の一撃…我は炎の星となる
燃えろ!ファイナルブレイズノヴァ!」
「コキュートス、やつを貫け!コキュートススラスト!」
「お願い力を貸して!カレン!」
「全ての厄災を断ち切る!デュアルサーキュラー!」
「勇者様力を貸して!ウインドブラスター!」
ファイナルブレイズノヴァの熱で鱗を焼き、脳を溶かし、コキュートススラストは背面の心臓を貫いた
操り人形カレンは中心部の心臓を燃やし尽くし、デュアルサーキュラーとウインドブラスターは尻尾の心臓を切り裂き貫いた
全て同時に潰すことに成功した
「シャアア…」
ヨルムンガンドは轟音を立て、沈黙した
最後に断末魔とも呼べる鳴き声を上げ戦闘は終了した
それと共に音也のドラゴニッククロスは解除され落ちていく
落ちていく音也をカトレアは掴み、抱える
「普通逆だよな、これ」
「飛べないのだから仕方ない
皆で勝利を掴んだのだから文句は言わせんぞ
それに私がサーシャのように危険な状況になったら庇ってくれるのだろうな?」
音也は頭を搔きながらカトレアに抱えられている
カトレアの問に対して答える
「もちろん庇うさ
でもこれはちょっと恥ずかしいからなるべく早く下ろしてくれないか?」
カトレアと音也は顔を見合せて微笑む
それ見たサーシャは怒りに肩を震わせている
「飛べるからっていい気になってんじゃないわよ!」
「うぉっ!?危機を乗り越えたらこれか…
いつも通りっちゃいつも通りだけどよぉ…」
「ふふっ…おもしろいわね」
サーシャはいつも通りカトレアに喧嘩をふっかけている
それを呆れながら見守るアランと音也
シャルロットは微笑みながら見守っている
1つの戦いに勝利し、一時の休息へと至るいつもやっている事だが今回は規模が違う
1人で掴んだ勝利ではなく、全員で掴んだ勝利だ
合成魔獣、今後もこのような敵が出てくるのだろう
合成魔獣・ヨルムンガンドその大きさだけで魔物や動物の生態系を破壊し、神すら恐れる命を合成する冒涜的な行為
音也はそのことに対し考える
(アルゼス教団、こんな生物を作って神にでもなったつもりか?
どこからでもかかってこい
俺は逃げも隠れもしない、必ずお前たちを滅ぼす)
8話 竜の魂 End
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます