アトス ③

 ギルドを出てまずは教会に向かった。

 三本目を曲がったら確かにすぐに分かった。とても大きくて派手な建物だ。

 アムジスは特に派手好きではないと思うのでここの領主の趣味なのか・・・

 また光ったりしても嫌なので〈隠者の指輪〉で存在感を消して入るぞ。


 中に入ると信者らしき商人と従者らしき人が祈っていた。神父が近くで見守っている。とても熱心な様子なので俺は少し離れた場所で待つ。

 ぼんやりと周りを眺めると内装はかなり凝っていて、神像も建物の作りも今まで見た中でもかなり立派だ。背後の採光窓も芸術的な作りで。


 商人のお祈りが済んだらしい。従者が神父に手のひらにのるサイズの革袋を恭しく渡す。中身が金貨だとしたら結構な金額が入っているっぽい音がした。

 商売の神の教会だから羽振りがいいのかな…信仰も世知辛いものだ。


 商人たちは俺の存在に気が付かずに去り、神父は少し首を傾げつつ奥の部屋に言った。うん。これは〈隠者の指輪〉がいい感じに使えているようだ。っていうか神父ごまかせたのラッキー。

 サッサと用事を済ませるために祭壇に近づいて祈る。

「来たぞ」

 いつもどおり、神たちの空間に…なんか庶民的な部屋になってる!!

 天井も壁もないけど、なんなら床もないはずなのだが、こたつにミカン、ふかふかのラグにソファにテレビ…ゲーム機も。

 そして神ほぼ勢ぞろい、いつものメンツがそろっている。暇か。ここは村の寄合所か何かか。シャルマとドリアスとメルティアとフォルティナがさっきに贈っておいたチョコレートファウンテンをキャッキャしながら楽しんでいた。なにやら変わったものをコーティングさせているが…イチゴやバナナ的なものかな。

 俺が贈った駄菓子なんかの袋がカラなのでいろいろ試したんだろう。…それは美味しかったんだろうか…


「いらっしゃい」

「全然来ないじゃないのぉ」

「メール見てくれないと」

 歓迎と非難の声が。

 ドリアスがふくれて言うが人前でメールチェックできんし、〈ネットショッピング〉も使えないんだぞ。俺だってわざと連絡を無視していたわけじゃないぞ。

「まぁまぁ」

 グラディウスがメルティアとフォルティナをなだめてドリアスを窘める。

 もう三神ともずっとチョコ食っていてほしい。

 少し落ち着いてから贈り物のお礼を言われ、今回の旅の労いの言葉を貰った。

 呼び出した理由は…いつもの如く街に寄ったならばと顔を出せということだが、王族についてと王都の情報を少しもらえた。

 そして貴族というものには気を付けろと。気を付けろと言われても…ざっくりすぎるだろ。どう気を付けるか…さ。

 なるべく静かに次の街に進みたいから…ほんと対応策とか教えてほしい。

 あとは、高ランクの冒険者は公侯爵家で囲いたがられるそうで。囲い込むために巧妙な誘いや罠があったりするらしい。怖い。王都行きたくないなぁ…

 〈鋼鉄の拳〉や〈新月の雷光〉がAランクになっていない理由がこれなのか。

 俺もイケてもBランクまでがいいのかもしれない。

 

 気ままに一人旅ができる日は来るのだろうか…


 向こうの時間は流れていないとはいえ、ずっとこっちにいるわけにもいかないので戻ると伝えると、アムジスに呼び止められた。

「これから大きく環境が変わるだろうから、旅で多くの喜びを得れるように」

 そう言って何やらバチバチとした光を飛ばして、光は俺の前ではじけた。

 わぁ…綺麗じゃなくて。…嫌な予感がする予言をされてないか。

 …加護はもうもりもりなので過剰摂取だと思う。この前も良い旅をって言ってくれてたし…

「心配しなくても私の神殿に来てくれた者にもあげている程度の小さな加護だよ」

 あ、お祈りにちゃんと応えてくれてるんだ。祈りや願掛けって意味があったんだ。

 「信じてくれる者は大事だぞ。もちろん加護を悪い企みに使おうものならそれなりの報いがある」

 んー、悪者全員に罰があたっているように思えないけど、そんな奴らはそもそも祈りに来てないから野放しか…

「バカだねぇ、人間の犯罪は人間が処理するだろう。私たちには人の世に直接関与はできないって言ってるじゃないの」

 ティアランシアが呆れた声で言う。でも報いがあるんだよな?

「神の加護を悪いことで使うならそれは赦されない」

 こたつでミカン食べていたヴェールがちょっとだけ悪い顔で言うけど…手にミカンの皮もっていて口に実を入れてるのカッコついてないぞ。


「商売の神に祈るなんて下心もいっぱいっぽいけどなー」

 大金が動くとき、人の良心はブレると思う。

「いいじゃん、野心は持っててもいいんだよー。ただ限度はあるってこと~」

 ドリアスがふよふよと飛んでこっちに来た。両手にチョコ串持ってるので締まらない。


 わかるようなわからないような気持ちのまま別れを告げて、元の教会に意識を戻した。


 



 

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