アトス➀

 解放されたから即自由とはいかず、ドットたちとアトスの冒険者ギルドに向かう。

 ふと周りを見渡せば、カナンの牧歌的な町とは違ってアトスは洗練された街並みだ。王都に近いってだけあって手入れが進んでいるのか、管理者の手腕か。

 冒険者ギルドも立派な石造りの建物だ。そして人が多い。

 ドットたちは顔が広い。ギルドに着くまでもギルドに着いてからもたくさんの声がかかる。俺はフードを被ってやり過ごしたよ。


 そして受付には美女たちと可愛い子と・・・すみっこに元の俺属性の影の薄いおじさんがいた。俺はあのおじさんの列に並びたい。親近感・・・

 混雑する中、しばらく待つと順番がくる。

 「久しぶりだな、マルシア」

 この美人はマルシアさんか。ドットたちが懇意にしているらしいのは美女のうちの一番セクシーな人だった。わかりやすいオッサンたちだな。

「いらっしゃい、大変だったみたいねぇ」

「まぁそれなりにな」 

 ドットが今回の依頼の途中経過を報告すると、今夜の宿を案内をされた。休暇は今日を入れて四日の予定らしい。宿はラシャドル家が用意してくれてそこそこお高く良い宿だそう。〈新月の雷光〉メンバーと俺は一部屋ずつにしてもらえるらしい。ランクで扱いが違うらしいが、俺は今〈新月の雷光〉のおまけ扱いだから。

 マルシアさんは一通り話し終わった後に俺に声を掛けた。

「貴方がジェイルくんね、カナンのギルマスと〈鋼鉄の拳〉から依頼がはいっているわよ」

「あー・・・」

 小さめな板を渡されたが多分内容はわかる。

「なんだー?」

 ドットが覗いてきた。

「・・・あー・・・」

 俺と同じような反応をする。

 ざっくり言えば、タバコを売ってくれだ。想像通り。

 送るのはギルド便(転送できるやつ)を使えって書いてある。

 タバコの数は俺任せでひと箱でいくら、送り賃は向こう持ちでという依頼がでているのですぐ済むがここでタバコをどーんと出すわけにもいかない。

 マルシアさんには用意をしてあとで持ってくると伝えた。

「そうなの~?」

 俺がおかしいことをするとドットたちに拳骨落とされるからな。

 ドットとドレイクが後ろでマルシアさんと俺のやり取りを見ながらニヤッとしてやがる。

 俺も学習はするんだ。今クサ吸ってないのも前にギルドの中で吸っていたら香りでざわついたからだ。本当なら依頼から解放されてすぐ街中でスパスパ吸っているぞ。


 そんなわけで休暇中は自由行動で、どこかに出かけるなら予定だけ知らせ合うってことになった。夕食には誘われたが、いわゆるオネエチャンが同席するお店らしいので断った。

「付き合いわりぃーなぁ」

 何と言われてもいい。接待で同席させられまくった身としては酒の席での女性は俺には必要ない。あくまでも俺には。

 だってドットたちの行きつけならドットたち目当ての女性だろ。ターゲット以外の客の扱いはわかってるぞ。

 断られるのもわかっていたからか、すぐ折れてくれた。


 まずは宿に向かって、依頼のタバコを用意するかと歩いていたら屋台が気になった。立ち飲みの屋台だ。これはいくしかない。

「あ、いらっしゃい」

 店主らしきおじさんが何にするか聞いたのでオススメを頼んだ。

「ほいよ」

 出てきたものはエールに柑橘系のジュースを入れたものだった。カクテルになんかあったな・・・生ぬるくなければまぁまぁなやつだ。こっそり冷やした。

 つまみには普通に肉と野菜を焼いたものが出てきた。

 〈鑑定〉が何やら不吉な名称を出したので見なかったことにした。お残しはダメなので無心になって食べたがわりとうまかった・・・マジか。

 うまくても気分的に口の中の味を変えたいのでもう一杯頼んだら赤ワインとエール割だ。とりあえず割りたいのか。

 だがこの世界のワインもエールもそれぞれ癖が強いので割ると多少飲み口がいい気がする。生活の知恵的なものかも。

 酒を飲んだらますますタバコが吸いたい気持ちになったのでとりあえず宿に行こう。飲み代は銀貨一枚だ。安い。俺は礼も含め銀貨二枚払った。

 教訓・・・おまかせはやばい。肉が怖いやつの可能性がある・・・


 宿はかなり高価そうな建物だった。ドットたち〈新月の雷光〉の威光はすごいんだな。中に入って受付に声を掛けると「ようこそ」と迎えられて用意してくれたラシャドル侯爵の名前を告げると鍵を渡されて、受付の男性が部屋に案内してくれた。

「こちらは浴室・・・お手洗い・・・洗面は・・・」

 なんと風呂トイレ付き。お湯は魔道具でいつでも出せるらしい。使い方を説明してくれる

「お出かけの際は鍵をお戻しください。お食事は朝食と夜食が付きます。必要のないときは一声いただけますと助かります」


 男性が礼をして出て行ったのでうちカギをかけて早速「〈ルーム〉」だ。

 中に入って速攻タバコに手を伸ばし、衣服をまき散らしながら風呂の準備とコーヒーのセットをする。


「はーーー・・・」

 冷蔵庫から無造作につまみをビールを出して一気飲みだ。

 これだよこれ。キンキンを一気。

 さっきの店の酒は悪くなかったけど。タバコが吸えてなかったしな。

 思う存分タバコを吸ってからスマホを開く。

「・・・・・・」

 あー・・・そうだな。そうだった。うん。

 ごめんて。


 神たちから恐ろしい量のメールが来てたよ。暇なのか。



==========


あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

そしてついに書籍の刊行日になりました。該当部分を取り下げでご不便おかけします。

続きはそのままなのでちょっとつながっていない部分があるかもですが随時訂正を入れていきますのでご容赦ください。


このお話を今日に間に合うように書き上げたかったのですが少し過ぎました。アトスで少し寄り道です。

 


 

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