アトスまでもう少し
朝、俺たちは村人たちに盛大に送り出された。
俺は、お姉さんたちに煮物や干物などをいっぱい頂いた。
薬のばあさんには、背中をバンバン叩かれながら「また来いな」と言われてハグしてもらった。
「ありがとう」
短い時間だったけど、村人ほぼ全員と知り合いになって、冒険者たちと毎晩のように食事をともにしていたオジサンたちは、とても寂しそうにしている。
空き時間には狩に精を出して、近場の魔獣をいっぱい討伐したから、感謝いっぱいに別れを惜しまれた。
ドットたちは、きっと近くを通りかかる時には立ち寄ると思う。
俺もたくさん旅した後に来る。ばあさんには長生きしてほしいものだ。
村を出てしばらくすると、足場の悪い道に入る。王都に近づくにつれて良くなっているはずだったが、山間谷間のような場所は自然災害や魔獣の出没があって常に良い状態には保てないってことらしい。
今はちょっとした崖沿いを進んでいる。景色よいだけど、荷台に座っている俺はちょっとヒヤヒヤしてしまう。
この状態で大型魔獣にでも襲われたら危険なので、みんなで最大限の警戒をしつつ進んだ。
休憩を挟みつつ、なんとか辿り着いた牧場で俺たちは休むことになった。
規模が小さいので、冒険者たちは野営になる。
シルスファンとミシェルは悪路が続いたから疲労していて、早々に休ませるとのことで、食事はケビンに軽いものを用意させて食べさせたらしい。
俺は食事係が免除になったので、ドットたちとゆっくり食事をとることになった。
いつも通り俺が肉を焼き、ピタパンを焼き、だったけれど、ドットたちが喜んで食べてくれるから気分は良い。
他の冒険者たちも、調理中に出る匂いで切ない顔でこちらを見てくるので今日もスープを振る舞う。お礼に干し肉や干し果物をくれた。
深夜の交代制の見張りは、久しぶりに俺も参加した。
周りは何もない草原なので、自分たちが使っている焚き火とランタン以外の灯りもほとんどないから遠くを見れば真っ暗だ。
俺はシルスファンたちのいる建物の近くを割り振られて、ちょっと残念だ。子供たちのそばではタバコが吸えない。一人でいるのでチャンスタイムだったのに。
仕方ないので俺はストーブがわりに出した魔道コンロで暖をとりつつ、三時間ほどぼんやり過ごして交代になった。
「うー、明け方は冷える」
いや、寒いのは露出が激しいからだと思うぞ。
おかしなことを言って交代にやってきたギグスは薄い布の足りていないシャツの上に肩当て胸当てをつけてるだけなのだ。そりゃ寒いだろ。そして男の胸はいらないってば。
ギグスは最初は俺を警戒して近寄ってこなかった連中の中の一人だけど、俺のスープ飲みたさに陥落したらしい。落とす気もないから陥落はおかしいと思うが、ギグスがスープを飲んで崩れ落ちたせいでドッドやギグスの仲間たちに、ギグスを落とした男なんて言われる。
「ジェイル。何か温かいものがないか?」
寒いのかと毛布を一枚渡すと、違ったらしい。
暖かい飲み物を欲していたようだ。
「ほら」
暖をとっていたコンロでワインと干し果物を一緒に温めて出してやる。本当はシナモンやスパイスも入れたいところだが、ギグスの前では〈無限収納〉を見せないように、俺だって一応学習はするんだぞ。
「ありがとう」
ギグスと別れてから、ちょっとだけ...と〈ルーム〉に入った。タバコが吸いたすぎた。
ふー。
もう、味わうとかじゃなく、ひたすら煙を口に詰め込みたい。そんな気分だ。
5分だけシャワーを浴びて、冷蔵庫から缶ビールを出して一気飲みだ。
人目を盗むチャンスが少なすぎて、〈ルーム〉には入れないのがツラい。
ドットたちも見張り交代の時間だから早めに戻らないと心配されてしまうので、断腸の思いで〈ルーム〉から出た。
寝床用テントに入るとすでにドットたちも戻っていて焚き火の周りで暖をとっていた。
「おー、戻ったか」
見張り中に何もなかったことを報告してそれぞれテントにもどった。
あと数時間で朝日が昇る。
_______
またも日が開きまして申し訳ありません
この作品の設定やブレている箇所を十二月くらいから修正していく事にしました
大幅な変更はないですが直した話はタイトルに⭐︎をつけておきますので気になる方は覗いてください
大幅に違う事になる場合は別途お知らせを挟みますのでよろしくお願いします
いつも応援、エールありがとうございます
急激に寒くなってきていますのでみなさん暖かくしてお過ごしください
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