足止め
子どもに配慮した日程、速度ではあったものの、次の街に着く前にミシェルが熱を出し、シルスファンは口には出さないけれど、明らかに元気が無くなった。
療養のため、宿泊施設ではなく小さな村に泊まることになった。
村と言うより集落かな。牧場などより大きく、十軒程度の家族住んでるような村。
貴族の乗る豪華な馬車の列、大勢の騎士と冒険者が現れて泊まることになって、村の人たちはワタワタしていたけど、一日で慣れたらしい。
シルスファンとミシェル、側に仕える人間だけ空き家を借りて、他はテント、野営という状態。
住民が少なくて借りられる部屋数が無かった。
そして食糧もこちら側も村側も余分には無いので調達は狩りと採取が必要で。
村に迷惑をかける分、みんなで張り切って近隣の森に出かけていく。
俺はミシェルとシルスファンの食事とみんなの賄いの手伝いに呼ばれてしまった。
「いやぁ、助かりますよ~」
料理人キリムは常に俺の手元を凝視している。
下手に手持ちの調味料は出せないから、ほぼ用意されている調味料を使ってるのでそこまで観察しなくて良いだろうに。
とは言え、ミシェルの療養食をみた時はビビった。
一応ついて来ていた薬師が旅行時に必要な薬は持っていたものの、道中飲ませても効果がなかったようだ。
村で医師を呼んで貰おうにも村には医師はいなくて、薬師もいない。薬草に詳しいおばあちゃんがいるだけだった。
おばあちゃんは、代々伝わる民間療法のヘドロ状の薬草スープを用意してくれたそうだ。
効くとしてもだな・・・これを飲まされた精神的ダメージで治るものも治らなくないか?
そのヘドロ状態の薬草スープを当然と言うのは申し訳ないけれど、ミシェルは泣いて拒否したそうで。
なんとかミシェルが飲めるようにしてくれって言われても無理だ。
どうにか、を考えるために味見したんだけど、なんて言うか・・・青汁って飲みやすかったんだなって思ったぞ。このスープ苦味とエグ味がパンチキックしてくるんだ。
良薬口に苦し、か?
ミシェルは多分精神的に疲れて熱が出てるだけっぽい。スマホでポチって医学部外品の解熱剤でも出せれば早い気もするけど、三歳児に下手な薬は出せないね。
ちなみにシルスファンも疲労っぽい。貴族馬車はクッション良くて乗り心地も荷馬車や辻馬車の比ではないけれど、二ヶ月乗るには辛いだろうし、動きたい盛りのはずのシルスファンはずっと大人しくしていて、ミシェルにも気を使ってるんだからしんどくて当然だ。
結局スープは蜂蜜と擦った果物を入れて、粉ミルクで栄養たっぷりにして、スープはほんのり使ってヘドロ感を最小限にしたものになった。
お薬感は減ってしまったけどまずは食べてもらおうってケインと話し合って決めた。
使用人や騎士たちの食事は野菜と肉いっぱいスープと甘くないパンケーキだ。他が食べたければケインが担当だ。
シルスファンには野菜みじん切りコンソメスープとプリンを出すときちんと完食してくれた。
「足りた?」
「はい。美味しかったです」
その様子が大人びてて子供っぽくないんだよなぁと思いつつ、シルスファンの口元が少し微笑んだのを確認してホッとする。
シルスファンの侍女たちは必死に表情を押さえてるけど、プリンが気になって仕方ないようで面白い。余分に作ってあるから後で食べてくれ。
少し話してから、俺と一緒にドットたちのところに行くことになった。
ミシェルはとにかく寝かせておく状態なので、シルスファンにはストレス解消をさせようと思って誘ったんだ。
「みんなみたいに火を囲んでお肉を焼いてみたかったです」
ニコニコと笑うシルスファンを俺は抱っこで運ぶ。本人は嫌がったけど、疲労でフラフラだったからな。
「父上にもこんなことされたことないです」
まぁ、こんな状況なら護衛か従者が抱き上げるだろうかなぁ?
一応侍女と護衛が後ろに付いてきている。
「おーい、ドット、クレイバー」
俺たちの持ち場はシルスファンたちの休む空き家のそばだからすぐに着いた。
「ジェイルー、おぼっちゃまどうしたんだぁ」
「お肉焼いてみたいって」
「おー!!」
従者が小さめな絨毯を引いて、場所を作ってくれたのでそこに下ろす。
「お熱は良かったんすか?」
「大人でもしんどいのによく頑張ってるな!」
ドットたちがかわるがわる声をかけるとシルスファンは嬉しそうに頷いて答える。
タメ口と荒っぽい仕草に従者たちはほんのり眉を動かしてるけれど、騎士ではない冒険者に礼儀を煩く言うことはないらしい。
近場にいた他のパーティのメンツもこっちを伺ってる。
俺がいると美味しいものがあるって思ってるんだぜ。全く。
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間が空きまして申し訳ないです。
ローペースですが王都に向けて進んでいきますので(o^^o)
本当にいつもありがとうございます。
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