会いたかった人編

第13話 次から次へとなんなんだ

 親友からの突然の告白とか、弥生さんが俺の世話係だとか、意外と面倒見がいい弥生さんとか驚くことばかりあった日から数日後。


 正直、ここ数日は疲れている。

 なぜか知らないけれどソラの教育係が俺の後をつけてくるようになったのだ。


「ここまでくればいいかな」


 俺は今日もまた追われていた。

 本当になんで追われているのか分からない。

 

「俺、なにかしたっけ?」

「なにかされたわけではないですよ。ただ君に異常なほどの興味があるだけです」

「うわあ?!い、いつからいたんですか?!」

「そんなお化けでも見たかのように驚かないでくださいよ」

「誰もいないと思ってたのに誰かいたら驚くだろ」

「あなたって時々タメ口になりますよね。そういうところも興味がわくところなんですけど」


 織、だったっけな。この人の名前は。今の表情を見て重なる人がいたからつい呼び間違えそうになった。

 なんでこうも似ているのだろう。妹の観察が上手かったからかな。

 にしても、異常なほどの興味って......正直めんどい。


「俺は敬う気がないなら名前も先輩なしで呼んでいいと弥生さんに言われてるんで」

「へえ?それで、あなたは僕を敬う気あるんですか?」

「ないんで、織って呼びますね。ってか、そっちのほうがしっくりくるんで」

「くはっ、正直ですねえ」

「正直なほうが得することもあるんでね。それで、本当になんで俺のこと追いかけてくるんです?ソラはいいんですか?」

「彼はどうせ君がいるところにやってくるでしょう。それに一通り教えたので大丈夫だと思いますよ。君こそひよこはいいんですか?」

「その聞き方されて分かる人少ないと思うんで、ちゃんと名前で言ってくださいね。弥生さんなら屋上にいるんじゃないですか?あの人、あの場所好きなんで。あと、俺の方が弥生さんに教えを請いに行く立場ですからね、分かんないことあったら聞きに行きますよ」


 俺の教育係が弥生さんだと知った時には驚いたけれど、安堵もあった。

 過干渉してこないという絶対的な信頼があったから。

 前では友人たちといる時間が大切だった。もちろんそれは今でも変わらないのだが、干渉されすぎると困る。

 それにあの時点では知らない人が自身の教育係になる可能性だってあったから。

 本当に、弥生さんで良かったとそう思う。


「あなたはひよこと......雲茂弥生と仲がいいですよね?彼の幼馴染と仲がいいから?しかし、それだけだと思えない雰囲気を感じまして......なぜですか?」


 なぜ......理由を問われても俺と弥生さんの仲の良さについての説明なんてできない。というか、自分と弥生さんが仲いいとか思ってないし。

 あの人がただ丸くなったから俺に声をかけてくる機会が多くなっただけだ。

 けれど、理由を言わないというのも織は納得しないだろう。なんなら弥生さんに聞きに行ってケンカをしてきそうだな。


「うーん、しいて言うなら運命、ですね」


 俺はそう言って笑う。

 ごまかし方が自分でも他になんかあっただろとかつっこみたくなるが、とっさに出てきたのがそれだった。


「運命ですか。本当の理由を話さないとは......ますます興味がわいていましたよ。では、またお会いしましょう」


 そう言い残して織は去っていった。

 

「......また来るのかよ。結局異常なほどの興味ってやつがあるから俺を追いかけてるってことか?はあ、当分心休まらないな」


 俺は思い切りため息をした。

 落ち着ける日が来たら、探したい人がいるのになかなか落ち着けないかもしれないな。まあ、地道に探すしかないか。




 

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