第11話 告白?
「オレな、ナルが好きなんだ。だから邪魔とか言わねえ」
「ん?知ってるよ。親友だもんね」
「そうだけど、そうじゃない!」
力いっぱい雨は否定する。
真剣な表情なのは変わらない。
親友だから好き。そういう意味だと思ったのに違うと言われるとどういう意味なのか分からない。
「どういうこと?」
こういう時は聞いてみるしかない。
考えたって分からなかったことのほうが多いのだから。
「オレは、ナルと一生共にいて、笑いあって苦しいことがあったら共有して乗り越えて、ナルが泣いてたら涙を拭いて......そんなふうに過ごしたいんだ」
「え?だから親友としてってことでしょ?俺だって雨と笑って過ごしてたいよ?それとは違うの?」
「違う。オレの好きとナルの好きは全然違う。ナルの好きはダチとして......親友としての好きだろ?でもオレはナルのこと前からずっと恋愛感情で見てんだ。前からってもちろん、そらの時からな」
「は、え、ええ?!」
驚きすぎて俺はそんな声しか出なかった。
だってそんなそぶりを感じたことは一切なかったのだから。
あれ、でもたぶん間違ってるのでは?これは妹が作った漫画なんだ。つまりは俺ではなくて......
「ソラと間違えてない?ほら俺ただのソラの幼馴染キャラだし。雨が好きなのも違うよね」
うんうん、きっとそうなんだ。
この告白イベントを聞くべきは俺ではなくてソラ。
この世界の主人公はソラなのだから。
「それを間違えるわけねえだろ。オレの世界を変えてくれて、オレがずっと一緒にいたいって思ったのも全部須磨空斗......そらだ。今は久保成海だけどな。オレの気持ちをナルが勝手に決めるなよ」
普段聞かないような低い声。
確かに俺のさっきの発言は雨の気持ちを勝手に決めてしまっていたようなものだ。
「ごめん。俺が雨の想いを決めていいわけないのに」
「しかも告った相手に否定されるのはなあ。いいか、もっかい言うけどオレが好きなのは他の誰でもないナルだから。これが例えそらの妹が作った世界だとしても、オレの感情は前の世界から変わってないもんだからな」
真っ直ぐ俺の目を見てくる。
その瞳からからかいなどではなく本当のことなのだと伝わってくる。
俺はずっとこの世界は妹が作ったんだからって思い続けてたけれど、記憶があるんだから弥生さんと雨は最初の頃から変わっているはずなんだ。
それなら前からの感情はあるわけで......
「ご、ごめん!時間もらっていい?!俺なんかちゃんと考えらんない!なんだろこれ?!嬉しいんだけど困るっていうか・・・本当にごめん!っていうことで考えたいので弥生さんと雨、ちょっとさらば!」
俺は走って誰もいないところに移動することにした。
周りに人がいないところでゆっくり考えたい。
そう思ったのだ。
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