親友編
第8話 親友
「ナル!オレとも話そうぜ!!」
さっきまで勇先輩と話していた井口が俺と弥生さんがいるところにやってきた。
「いいよ。このままでもいい?」
俺は再び雲茂さんに膝枕をさせられている。やっぱり疲れてるから寝させろということだ。まあ、無理させるのも良くないし別に構わないのだが......男の膝とか寝づらいだろうとは思う。もちろん雲茂さんにもそう言ったのだが無言の圧を感じたのでそれ以上は何も言わず大人しく膝を貸すことにしたのだ。
「全然いいぜ!弥生にはそこ代わって欲しいけどな?」
「代わるわけないでしょ。僕だって疲れてるんだから」
「抜け駆けだめって言ったろ?」
「これは成海がいいって言ったからね」
どうしよう二人の会話についていけないのだが。前はこんなことなかったのになあ。二人がこんなふうに喧嘩しそうな雰囲気になることもなかったし。幼馴染だって言ってたしなにか変わったのかな。
「ナル!あとでオレにもしてくれよな!」
「え?まあいいけど」
「よっしゃ!」
なぜか俺が井口の膝枕をすることになった。
それに対してガッツポーズをするほどに喜ぶ井口が分からない。俺の膝になんの勝ちがあるのだろうか。
「それで、話したくてきたんじゃないの雨は」
「おう!ナルと話したかったんだ!!久しぶりだしな」
そう言って井口が笑う。相変わらず爽やかな笑顔だ。前からずっとその笑顔が好き。その笑顔を崩させたくなかった。
俺がいなくなったあとの彼がどうだったのかは分からない。でも、泣いていなかったらいいなと思うのは俺の自己満足になってしまうのだろうか。
「そうだね、井口はどうして記憶があるの?」
脈絡のない問い。
けれど、ずっと気になっていた。だから解消してしまいたい。
彼にどうして記憶があるのか。雲茂さんも井口については分からないと言っていたから。その答えを今聞きたいのだ。
「そうだな......ソラのこと忘れらんなかったからかもな!だって、ソラがいなくなってからも絶対また会いたいって思ってたからなあ」
俺とまた会いたかったから忘れなかった。記憶がある理由はそういうことだと言って笑う。
「俺も会いたいって思ってたよ......また会えて君の笑顔を見ることができて本当に嬉しい」
俺と会いたいと思ってくれたことがなにより嬉しくて俺も笑う。
拭いきれないほどの後悔も、井口が流してくれる。
「その顔は反則......」
「え?」
「こっちの話だから気にすんな!」
呟いたことがなんだったのか聞き直そうとしたのだが本人に気にするなと言われたらもう聞くことはしない。
とりあえず、今はまた会えてこうして話せていること、彼が俺に会いたいと思ってくれていた事実に浸っていたいとそう思った。
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