後書き
「トップアンドバック!!」に最後までお付き合いいただきましてありがとうございます。
本作は、スポーツ物を書いてみませんか? といった有難い声をいただいたり、また、自分でもスポーツを絡めた青春モノは好きなので、という思いがあったりで、筆を取った作品となります。
女子バドミントン部を舞台にした以上、男性キャラは出しにくく、恋愛要素は基本的に「抜き」でいくと当初から決めていました。
これまで恋愛感情の機微を武器に執筆してきたとの自負はあるので、一番の武器を落とした状況でどこまで描けるのか? 正直不安はありました。
それと、アクションの描写には自信があるよ (思い上がりかもしれませんが苦笑)と公言してきたのもあって、相応のプレッシャーも。
もっとこうできたんじゃ? みたいな思いもあるのですが、それでも、それなりにちゃんとまとまった物語にはなったんじゃないかなと。
躍動感、結構出せたと思うのですが、いかがでしたでしょうか?(こればかりは私には判定できないや)
さて、ここから少し裏話。
ネタバレ要素があるので注意してください。
(1)心が紬をダブルスに誘った理由
彼女は「全国に行きたい」という強い意思を持っていました。
そのため、紬を全国に行くための「手段」として考え「打算的」に誘った部分があるのは事実です。
ところが、紬の初期のダブルスはなんとも不甲斐ないもので、そのことに心はだいぶヤキモキしていました。
(ダブルスプレイヤーとしての)紬の欠点にも早い段階で気づいていますし、遠回しなアドバイスを送ったりもしていました。
なので、迷いがなくなった紬に対して、「私と組んでくれてありがとう」という最後の言葉に繋がるのです。
当初はダブルスや団体戦を全国に行くための「手段」として見ていた心の考えは、作中を通して変化してきていたのですね。
(2)紗枝の気持ち
心や紬が感性で動くプレイヤー (天才肌ってやつです)なのに対して、紗枝はより相手と意思疎通をするのに長けているプレイヤーでした。
動きではなく「意思」を読む「気遣い」のプレイヤーなので、初期の段階で紬とペアを組めたのです。
(これには、彼女の恋情がからんでいるのも事実です)
しかし、感覚で動く心と比べると、どうしても反応速度で一歩遅れてしまう。技術的な部分のみならず、総合的に見て自分では紬の力を百パーセント引き出せないのだ、と途中で悟ってしまいます。
これが、ランキング戦時のペア交代劇につながったのです。
全国の舞台で、トップシングルスで起用されていることからもわかるように、紗枝はのちにかなり腕を上げます。いつの日か、再び紬とペアを組む日がくるかもしれませんね。
(3)神宮寺姫子
ただのツンデレだったよ……。
これだけで当初済ませていたのですが、香澄翔先生に「姫子にきびしすぎです!」怒られたので追記。
姫子は、ある意味本作一の苦労人かもしれませんね。
紬のせい (だけではないとしても)で父親は職を失って、自らの誘いにもいっさい乗ってもらえず退部され、それなのに高校に入学したら心とペアを組んでちゃっかり復帰とか。
そりゃあ、怒るよねと苦笑。
それでも、なんだかんだ言って紬の復帰を喜んでいるし、本当に良いライバルであって友なのだなと。
最高だぜ、姫子。
(4)紬の成長
物語の主題は、両親との関係の修復と紬の成長でした。
バドミントンが嫌い (強がりが含まれていますが) から バドミントンが好きへ。
勝たなければならない から 楽しむのが一番大事へ。
言葉にするといたってシンプルな、この二つの感情の変化を描くための物語でした。
負けた試合後にラケットを叩き壊したり、握手を求めてきた相手の手を取らなかったり、勝負にこだわるあまり幼少期の紬は鼻もちならない少女でした。才能がある人間ゆえの、傲慢とでも言うのでしょうか。
肩を壊してしまったのは確かに不幸ですが、おかげで手に入ったものがあったんじゃないかな? とそう思うのです。
紬の進む未来に幸あらんことを。
さて本作。当初はバッドエンドを予定していました。
紬が、自分に足りていないものを他の部員たちの中から一つずつ見出していき、自分がいかに至らないかに気づき、バドミントンから身を引いて裏方に回る……とそんなストーリーです。
麗香の統率力を褒める場面は、その名残がちょっと出てる。けど、これだと主人公の成長を描けないし、爽快感がないなと変更していまのかたちに。
危ない。
そうしなくて良かったですね。それだとこの熱量は絶対出なかったと思うのですよ。
それではまた、次回作でお会いしましょう。
2023年11月12日 木立花音
トップアンドバック!! 木立 花音@書籍発売中 @kanonkodathi
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