第51話:前置きが多すぎる健斗。
「全面歩きなんて、そんな悠長なことしてて手遅れになったらどうすんだよ」
「俺、車とか持ってないからさ、このさいレンタカー借りようよ」
「れんたかあ、ってなんれす?」
「四人くらい乗れる動く箱だよ」
「はあ・・・無理れふね」
「なんでよ?」
「ゴミ箱の次元トンネルはせいぜい人一人分しか通れましぇんからね」
「え〜まじで?」
「最悪じゃん・・・人ひとりって・・・全行程、歩きってさ」
「労せず功は得られましぇんよ」
「功なんか得られなくていいよ・・・利用できるモノは利用しないと・・・」
「ベンジャミン・・・おまえの持ってる杖で瞬間移動とかできないのか?」
「この杖はひとり用れふ」
「あなたを引き連れて移動なんかできないんれふよ」
「どこかからモノをパクってこれるんだろ?」
「だったら人間だって移動できるんじゃないかって理屈だよ」
「人間みたいに大きなモノは無理れふって」
「せいぜい持ってこれたとしても、そこにある薄型テレビくらいまれれふ」
「あのれふね物語の設定上、辻褄をわせるのが大変なんれふから」
「余計なことは言わないれくれまふ?」
「人間以上の者が簡単に移動できてしまうってことになると、それじゃ〜
どこかにいるパンさんを取り戻すことだって簡単にできてしまうれひょう?」
「なんでも簡単にできてしまうと、つまんないでふよ・・・それになんでも
人にばかり頼ってたら人間堕落してしまいまふよ」
「なんだよ役に立たないヤツだな」
「そんなことワテに言われても・・・ぷいぷい」
「そういう時だけ、重宝しようとしないでくらはい」
「そんな便利なことができたら話が、あっと言うまに終わってしまうんれふ」
「そんな横着言ってる間にパンさんに危険が及びまふよ」
「そうだ異世界へ行くのに手ぶらはまずいよな」
「行ったら何日かかるかわかったもんじゃないし、水に食いもんだって必要だろ?」
「ホテルに泊まるにしたって金も持っていかなきゃいけないし・・・そうだろ?」
「ホテルなんかありましぇんよ・・・寝泊まりは野宿が基本れふ」
「ワテなんかどこででも眠れまふよ」
「まあ、それが嫌なら民家にでも泊めてもらうかれふね」
「れも、タダでは止めてもらえましぇん・・・お金はいらないと思いまふけろ、
お返しに鶏小屋の掃除とか牛に干し草やったり・・・奉仕活動なんかしないと
いけましぇんけろね・・・」
「めんどくせ〜」
「なんか健斗さん、パンさんが来てから人間が堕落してましぇん?人間失格れふよ」
「太宰か・・・」
「関係ないことは言わないでいいれふから・・・」
「俺はさ、横着で言ってるんじゃなくて・・・」
「食料がないと旅が続けられないだろって言ってるの」
「健斗さん矛盾してまふね」
「さっきも言ったでしょ、薄型テレビくらいの大きさのものなら出せるって・・・」
「飲み物や食べ物こそ、ワテが段取りつけますって・・・」
「あ、なるほど・・・俺ってつくづくバカだな」
「今頃分かりました?」
「バカにしてる?俺のこと・・・」
「ご自分で言ったんれひょ・・・バカって」
「俺はいいんだよ、自分で自分のことバカって言うのは、人に言われるとカチンと
来るんだよな」
「プライドが高いかられふよ」
「それよりそんな些細なことどうでもいいじゃないれふか・・・」
「ん〜ま・・・とりあえず、おまえがいてくれて旅の途中で餓死なんてことには
ならないみたいだからよかったよ」
「どうせ、向こうへ言ったらおまえのいいなりだろうからな」
「よろしく頼むよ」
「ようやく素直になりまひたね」
「パンさえ帰ってきてくれたら俺は誰にでも頭をさげるよ・・・」
「元気出していきまひょう」
「エマ様のせいで大変なことになってしまいましたが、嘆いていてもはじまりま
しぇん」
「ここは気合入れていきまふよ」
(普段はぼーっとしてるベンジャミンなのに、なんでそんなに嬉しそうにしてる
んだ?)
(俺やパンと暮らしてて毎日退屈してたか?)
(俺とパンがエッチしてる時は、外においやってたからな・・・)
(可哀想なことしたかな・・・)
どっちにしても、向こうの世界に詳しい今のベンジャミンには、いくら虚勢を張っても頭があがらない健斗だった。
つづく。
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