第50話:旅の支度。

「ところで・・・おばさんのいる場所知ってるのはベンジャミンだけだろ?」


「ま、たしかに・・・」

「ほんじゃま、ワテも一緒に行くとしてれふね」

「できたら他にも誰か役に立つ助っ人を連れていきまひょう・・・」


「そんなお人好しいるのか?」

「人を雇うのにタダで来てくれるヤツなんかいないだろ?」


「人間の世界とは違いまふ」

「なんでも金、金って金がないと動かないのは人間の悪いところれふよ」


「だってよ、金で買えないモノはないだろ?」

「貧乏なのは惨めだぞ」

「金があるから文明だって発達してるんだろ?」


「人間界と異世界ではものに対する価値観が違うんれふよ」

「報酬なんか出さなくても協力してくれる人はいくられもいるんれふ」

「それは心のつながり・・・情のつながりれふ」

「誰もが世話したり世話になったり・・・そうやって世界は繋がってるんれふ」

「金に溺れた人は情けを失って冷徹になっていくんれふ」


「まあ、たしかにな・・・人間の世界って文明の発達とともに何か大事なものを

失ってるような気がするな」

「人の心も殺伐としてるっていうか・・・」

「毎日、どこかで人が殺されてるし・・・どこかで放火するやつがいて火事が

ない日はないもんな」


「まあもし助っ人になってくれる人がいなかったら、その時はその時のことれふ」

「それについてはワテに思い当たる人がいまふひ、ぜひ連れて行きたいと思ってる

んれふ」


「誰それ?」


「魔法使いれふ」


「魔法使い?・・・そんなの本当にいるのか?」


「魔法使いと言ってもゲームに出てくるような炎を操ったり何かを凍らせたり」

「そういうんじゃないれふからね」


「人を思うものに変えられる能力に長けてるんれふ」


「健斗さん、偉そうな態度だとカエルに変えられまふよ」

「人間界へ帰ってこれないまま、そこらのどぶ川でゲロゲロ鳴いて一生過ごすん

れふよ」


「分かった、魔法使いには逆らわないようにするよ」


健斗は魔法使いと聞いてロード・オブ・ザ・リングの「ガンダルフ」みたいな

おじいさんを想像していた。


(あとエルフとドワーフ、ホビットがいたら、まじロード・オブ・ザ・リングだな)

(でもエルフもドワーフもいないんだよな、出どころが違うし)


(エルフとかドワーフってもとはゲルマン神話だろ?北欧神話だもんな・・・

こっちはギリシャ神話だから、出てこないんだよな)

(北欧神話に比べてギリシャ神話ってめちゃエロいよな・・・まさに酒池肉林

って感じ)


ゲームやファンタジー系に精通してる健斗は神話なんかの歴史文化には多少は

詳しいのだ。

だからパンが現れた時もニンフの存在は知っていた。


「でも・・・魔法使いって・・・にわかには信じられんわ」

「まあパンの存在自体、最初は信じられなかったけどな・・・」

「ベンジャミンと言い、次々変なやつが現れるし・・・頭がおかしくなりそう

だよ・・・」


ごちゃごちゃ、ひとりくっちゃべってる健斗を無視してベンジャミンはごく

短時間で今回の旅の計画を練った。


「できればヘラ様の機嫌をそこねないようにしたいれふね」

「丁重にヘラ様に頼み込んでパンさんを返してもらいまひょう」

「貢ぎ物とかあればいいと思いまふけろ・・・」


「ま、どうしてもダメって時はあの人に人肌脱いでもらいまひょうかね」

「いろいろ策を練ってるとワクワクしてきまふね」

「面白くなりそうれふよ、これは・・・」


「あのさ・・・なんかヘラって嫉妬深いおばさんなんだろ?、想像がつきそうだな」

「パンを返さないなんて言われた日にはいちいちめんどくさいよな」


「おばさんなんて言ったら肉団子にされて豚の餌にされまふよ」


「なんかさ、これってロールプレイングゲームみたいだな」


「健斗さんがパンさんとセックスしてない時にせっせとやってるゲームれひょ」


「パンが頻繁にセックス、セックスって言うから最近はその時間もなくなって

きてるけどな・・・」


「ところでチームを組んで冒険に出かけるんだろ?」

「魔法使いなんかが加わったら、ますますロールプレイングゲームじゃん」

「俺、剣なんか使えないからエアガンでも持って行こうかな」


「そんなもの持っていく必要はないれふよ」


「つうかさ・・・パンを見つけるのに歩いて探しに行くのか?」


「れふね」


つづく。


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