第49話:ゲームから頭が離れない健斗。
「もともとは俺ひとりで悠々自適な生活を送ってたんだからな・・・」
「そこへパンが現れて俺の生活空間の中に入ってきて一人の時間を台無しにしてくれたんだもんな」
「それ以来セックスに明け暮れる日々で好きなゲームもできてないんだ・・・」
「台無しって・・・そんなこと聞いたらパンさん、泣きまふよ」
「薄情な人ですね、健斗さんは・・・」
「・・・あはは、今のは本心じゃないから・・・俺もパンがいないと困るし」
「セックスできないからでひょ?」
「それもあるけどな・・・家の中に女性がいるってだけで明るくなるだろ?」
「なんやかんや言ってもパンがいてくれたおかげで楽しい時のほうが多かったし」
「パンのあの柔肌が忘れられないよ・・・」
「そうだよ、パンの言葉で救われたことだってあるんだよ・・・」
「お〜だんだん勇気が湧いてきたぞ」
「単純な人れふね」
「おい、この気持ちの高ぶりに水をさすなよ」
「じゃ〜パンさんを助けに行く気になりまひた?」
「お〜イクイク・・・何処へでも行くぞ俺は」
「そうれふか・・・そうと決まれば早速計画を練らないとれふね」
「つうかさ、どうやってあっちの世界へ行くんだよ」
「それに武器も持たないで・・・どんなに頑張ってもゲームみたいにレベルアップ
なんかしないし」
「もし、向こうで化け物と遭遇したら、俺負けるよ」
「ギタギタにされて骨まで食われるんだぜ・・・どうしてくれるんだよ、そんなことになったら」
「想像力が、はなはだたくましいれふね」
「それこそそんなのはゲームの中だけれふよ」
「一部を除いては危ないところなんか、ほとんどありましぇんよ・・・いたって平和れふから」
「人を襲ったりする化け物も確かにいまふけろ、たいがいはセックスに明け暮れることしか考えてない連中ばかりれふから」
「パッとおばさんのところへ行って、頭を下げてパンを返してもらうわけにはいかないのか?」
「直接ヘラ様のところには乗り込んではいけましぇん」
「ゴミ箱から通じてる場所は今の所一箇所だけれふ、そこしか出入りできましぇん」
「そこからだとヘラ様のいるパルナッソス山麓へ行くには森を抜け海を渡り何百キロも旅して、少なくとも一週間くらいは進まないとたどり着きましぇんからね」
「まじで言ってる?」
「まじでそんなに遠いのか?」
「でも助けにいかないわけにはいきましぇんよね」
「なんかさプルプルプルって音がしたら一瞬で移動できたりしないの?」
「頭の中、ゲームでできてまふよね、健斗さんは・・・」
「そんなラクして物事を解決したって感動が薄いだけれふ」
「あ〜またテンションが下がってきた」
「優柔不断な人は女性に嫌われまふよ」
「とにかくひとまず計画を練りまひょう」
「ってことはベンジャミンおまえも行ってくれるのか?」
「留守番してまひょうか?」
「ひねくれたヤツだな・・・」
「な〜頼む、お願い・・・一緒に来てよ」
「カップ麺グレードアップするからさ、チャンポンか餃子つけるからさ」
「んまあ、そう言うことなら行きまひょうかね」
「って言いまふか、ワテにとっては里帰りれふけろね」
「日頃パンさんには優しくしてもらってまふから」
「パンさんに万が一のことがあったらワテも悲しいれふひ・・・」
とりあえずベンジャミンは下手くそな地図を作った。
そしてその地図にパルナッソス山麓へ行くルートを赤いマジックて辿った。
「わ〜その地図何分の一?」
「え?適当れふ」
「それ見てるだけで、やる気が失せるよ」
健斗は荷物を抱えてマップの上を歩いて冒険に出かける自分の姿を頭に浮かべた。
「何もない草原や山や谷を越えて、雨や嵐をかいくぐり雑魚キャラを倒しながら
進むのか?」
「向こうへ行ったら馬車とか調達しないか?」
「まあ車やバイクはないだろうから・・・」
「どうしてもゲームから離れなれないんれふね、あなたは」
「ゲームのことは忘れてくらはいね」
「絶対、勘違いしてまふよ」
「それに人間界と違って、あっちはほとんど雨なんか降りましぇんから」
「まあ全コース歩きだけじゃないれふから・・・」
「タクシー拾うのか?」
「私をコケにしてまふ?、車もバイクもないってのにタクシーが拾えたらワテだって率先して利用しまふよ」
「海を渡る行程があると思うので船に乗ることになると思いまふよ」
「あ〜そうなんだ・・・え?海?・・・」
「ヘラ様のところへ行くには海を越えなくちゃいけないってことれふ」
「豪華客船とか?」
「どうしても贅沢したいんれふね」
「もっと真面目にやってくらはいよ」
「そんなムキにならなくても・・・」
「ならいいなと思って、言ってみただけなんだからさ・・・」
先は思いやられる健斗だった。
つづく。
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