said兄

アイツは口を奪われたあの日から今日に至るまで

毎日俺の酒場に来る

親と決別してまで自立した俺だからこそ

アイツには全うな幸せを送って欲しい

いつも通り売り上げの集計と商品の確認

アイツにもたまに接客をさせた

手伝いが増えて悪い気はしなかったし

どうしてもアイツから奴の記憶を払拭させたかった

なぜなら、アイツは奴に奪われた後

奴の女から罵声を尽く浴びるように仕向けた上

挙句の果てに被害者面をして保護者会にまでなってしまった

完全な俺の落ち度だ

俺が観覧車乗ってみろなんて言ったから

単純なアイツは…もっと危機感持たせるべきだった

不幸中の幸いは俺がボイスレコードを撮るって貰ったことにより

保護者会は円滑に事が進んだ

今日アイツは二十歳になる

俺からの細やかなプレゼントだ

ジンにライムにジンジャーエール

そう言えば水浸しになって帰ってきたアイツが酒飲みの俺のこと考えて…

そんなことを思いながらドラゴンフライを作った

意味は…空を眺めて

こんなゴミみたいな人生送った俺でも

アイツが来てから上を望んで

めげずに努力して昔よりも良い人生だからだ

未来は分らんが○○にも幸あることを願って

今日も俺はシェイカーを振る

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