夜行-波紋

said女

私はよく一人だ

何にもなれず、戯れず

関われば傷つくのは自分だと最初から分かっていたから

深く、静かな湖のように凪ぐ

この心は一生変わらないものと決めつけていた

そう、あのころまでは


私の高校生活はキラキラギャルに絡まれる以外は

多分、何不自由なかった

花は無く、静かに授業を受け校則を守り空きコマは図書館へ

先生には提案もしくは相談すれば申請も通ったし

根暗な私にはこれくらいが丁度いい

最低限度のことさえやればみな文句は言えないだろうし

そんな私も昔一度だけ、授業で本気を出して

人には嫌われ、体は発作を起こし…

それからというもの、私はずっと静かに生活している

授業は退屈だ

知らない情報を一気に詰め込まれ

その瞬間に全部詠唱

それの繰り返し

まるで馬鹿の一つ覚えじゃないか

そんな時隣の生徒が顔を曇らせていた

どうやら、嫌みしか言わないと定評のある教師に指名されてしまったらしい

無論、私はどうとも思わなかったが

流石に見るに堪えなかったのでノートを丸ごと渡しておいた

それから少しの休み時間を彼と話すことにすり減らした

久しぶりに充実した時間を過ごした

しかし、次の時間もあの幸福感が離れず

私はその日の内に本当のがらんどうになってしまった

今思えばあの日落ちてしまったかもしれない

三年ある日の放課後久々に彼が話しかけてきた

確か彼は級長で、担任に頼まれていた

内容は大方予想がつく

「あの…さ、遠足一緒に行かない」

これは学校の方針で絶対に一人になっていけないのだ

勿論、私には女友達がいないことを先生は分かりきっており

唯一話したことのある彼を差し出してきたのだ

なんてまどろっこしいんだと思いつつ一言

「いいよ」

と返してやった

この場に似合わないほど頬を赤らめてしまったのは言うまでもない

このことを相談相手が居ない私は幼馴染の兄に話すと

ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべ明日のためと仕込まれてしまった

当日、遊園地は賑わいの最絶頂

右を見ても左を見てもリア充だらけ

砂糖菓子よりも甘すぎるムードを横目に

こちらはしっかりと満喫した

時間が近づいてきたため、昨日言われた入れ知恵を思い出し

観覧車に乗ることにした

そして私は思い切って

「君はどうして私を欲したかわかるか」

と言ってみた

もしこの言いようで私一人が気の迷いで浮かれていたら

相手の反応で諦めが付くと思ったからだ

彼は「正直分からない」

と静かな声でつぶやいた

「それは君が私に言いたいことよ。」

怖くて辛くて寂しい感情が溢れてきた

有りもしない感情が流れてしまった

「自分が可愛くてしょうがないのよ

相手を知ることはいとわない代わりに

比べて、選別して、苦しんで

過去に浸ってしまうのが運の尽き」

どうしても求めてしまった

「皆、自分を知るのが怖いのよ」

夕凪を背に全ての想いに寄り添ってくれる人を

私は上手く穏やかに笑えただろうか

今日は兄に会いに行こう

お菓子とライムとジンジャーエールを土産に持って

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