とある香

冬の香 暁の夜に 雪花かな

「他愛もないな」

寒さに凍える私には、生きるために貴方達と…


これは昔、私が3つか4つの時ことでした

♪雪こん シロさん よっといで♪

♪ごにゃん むつしく ひちのつぼ♪

「助けて、お願い」

「だれ?どこ?」

「クーン…」

「どうしたの?狐さん!?」

そこには二匹の狐が猟師の罠にかかってた。

近くに小川があったので優しく手当てをしてやった。

「はい、これで終わり。

お家はどこ?連れていくわ。」

狐さん達は利口で、鳴いて方向を教えてくれた。

そこには甘い香りの白い花が沢山咲いていた。

「綺麗…」

奥まで歩くと急に胸の奥が温かくなって…

「「ありがとう、」」

煙でボォッとして気付いたら自分の部屋の布団に居た。

それでも綺麗なあの声は何故かずっと耳に残ってた。

「また会えるかな?」


ある日の入学祝の席

私は酒樽の集計をする母様に

「いい匂い、これは何?」

と大好きな花の名を問うてみたら、

「これはクチナシよ」

この白い花…

「あの甘い匂いの木?」

「そうよ、ほら手伝って」

「えー」

そんなことを言いながらふと私は悲しみを覚える。

靄がかかったかのようなこの苦しさはなんだろう。


私は女学生に成りました。



この平和はあまりにも切なく

母が人生を仕組んでたとは知らずに。


♪雪こん シロさん よっといで♪

♪ごにゃん むつしく ひちのつぼ♪


「ねぇ、シロ兄さん。あの厄災ババアどうにかならねぇの?」

「こん、もう少しの辛抱だ。そうしたら、必ず迎えに行く。」


ん?お酒…飲んでいいかな?

銘柄は帳割り?また新しい変なお酒作ってる。

一口飲んで、私は深い眠りについた。


暖かい、懐かしい匂い。

「ただいまー」

「おかー」

私は、はっとして周りを見回した。

全く知らない。

そして、なぜ私はお姫様抱っこされてるの?

この方々はどなた?

何か耳と尻尾ついてるんですけど!?

「あの、ここどこですか?」

「?君、凍死しそうだったから

僕らのお社連れてきたまでだよ。」

「帰してください、家に。」

「あー、それは無理だ。」

「なんで。」

「だって潰れてるし君の家。」

「ちゃんと教えてやれよ。

集落丸ごとだっつーの、テメェの母親がやったんだぜ。」

私は男の腕からスルリと抜けて窓を開けた。

「…そんな」

嘘、そんなの…

だって母様は…

「まぁ、信じられないのも無理ないか。」

こんなの信じれるわけがない。

「でも、僕たちなら直せるよ」

「それなりの報酬は貰うがな」

家も何もかも失くなってしまった。

もう、なにもないの。

いいえ、それでも一つ希望があるとするなら

「ねぇ、唄の賭けをしない?」

「ほう?」

「もし、私が勝ったら無条件で」

「俺らが勝ったら?」

「その時は好きにするといいわ」

私が唯一村で一番になったものが、

''唄合わせ''

強い句が来たらそこで終り。

一か八かの勝負。

だから私が一番だと確信していた句を投げた。


冬の香 暁の夜に 雪花かな


「他愛もないな」

そんなことを言ってきた彼らは


彼の女 桜錦を 纏いつつ

  暮れの彼方に 夢思いつつ


「もうないの?」

これはどうしようもなく負けだ。

「…私の…負けだ。」

二人は顔を会わせて頷き

「勝負あったね、それじゃ…約束通り願いを叶えて貰おうかな。」

「願いは君の記憶を在るべき物にする事。」

「何を言ってる…」


靄が晴れるがごとく記憶が呼び覚まされた。

「「ありがとう」」

♪雪こん シロさん よっといで♪

♪ごにゃん むつしく ひちのつぼ♪


「その歌…」


「これか?昔俺らを救ってくれた娘が唄っていてな。

いつか合えるんじゃないかって。…そんな希望さ

唯一の接点だし。」

その後、母様…いいえ、魔道と村で噂された者が来て…私は…


その時、私は初めて涙したかもしれない。

此処に有ったんだ…私の里が。

全ての鎖がバラバラ音を立てて

外れていくような気がした。

「やっと気づきましたね。」

「っておい、泣くなよ。」

「雪くん、シロ兄さん。二人とも、ただいま。」


そう思ったつかの間…

「見つけたよ、獣。私の娘をよくも!!!」

「ッチ、厄災!!!お前だけはゆるさねぇ」

「待って!、この二人に酷いことしないで」

「あら、解けてしまったのね…なら、もう良いわ。死んでちょうだい。」

それから、雪くんとシロ兄さんは戦い

私はやっとの思いで短剣を手に取り

「もう、これ以上何も奪うな!!!」

全ての仇である魔道を滅した瞬間であった。

ドロドロと壊れていく体を眼にしても、何も思わなかった。


落ち着いた。

全てが終わった。

苦しみにもがいた13年。

数え年で行くと、もう16歳

「本当に世話のやける私たちの花嫁ですね。」

私はここで生きていく。

私の本当の家の天空ノ庭で。

「「おかえり香り」」

私は二人のことが大好きです。


《番外編》

魔道ババアのおかげ様で香りと会えなくなって10年目

相も変わらず魔道ババアの使者の討伐に明け狂う今日この頃。

「そう言えば、香りどうしてるだろうか。綺麗なんだろうな。早く迎えに行きてぇ。」

「束の間の質問だけど迎えに行った後、どっちが香りを娶ろうか。」

「「愛してる俺だ。」「いいえ、私です。」」

×246130回目

「此では拉致があきませんね。」

「いっそのこと二人で一人を娶るか?」

「そうしましょう」

「そう言えば、現世だとこの事3Pとか言うんだぜ。」

「品がないですよ、こん。いくら、その行為が魅力的とは言え。」

「シロ兄さんの二次創作読破してるムッツリスケベなくせに。」

「何です?殺されたいですか?こん💢」

「あー、こっわ~い」

1※討伐完了済み。

2※始まって3分程…

今日も平和?な一日でした。

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十六夜 桜吹雪 @dazai036

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