第7話

 村人に案内され、マリーダ氏の家へとやって来た。

 仮にも村長の家だろうにぼっろぼろのアバラ屋だ。

 この村の他の家もぼろぼろだったからまともな大工もいないのだろう。隠し村じゃあ仕方がない事だ。


 マリーダ氏は20代後半くらいの年齢の、凛とした佇まいの女性だった。かなりの長身で立ち姿に隙が無い。

 元騎士か何かだろうか? 明らかに何かしらの武術を修めてる人間のようだ。

 少なくともこんな覇気のない村民しかいない、限界集落のような村にいるのは場違いな人だと思う。

 

 「どうも、ギルドからダンジョン探索の依頼を受けてきたものです」


 「君がそうか……よく来てくれた。私はマリーダだ。この村のまとめ役をやっている」


 丁寧な対応だ。振る舞いも上品だし、ますますこんな村にいるのは場違いだと思う。


 「クラタです。見ての通りの冒険者です。」


 「よく来てくれた。ここまでの道中大変だったのではないか? 」


 「いえ、そんなことはないですよ」


 「そうか、早速で悪いがすぐにダンジョンの確認をお願いしたい。内容はギルドで確認済だと思うが三層までのモンスターとダンジョンの規模の確認だ。ダンジョンは村の西側にある。すぐそばにあるから迷うことはないだろう。他に何か聞きたいことがあれば今のうちに質問してくれ」


 この辺は問題ないな。依頼書に書いてある通りだ。質問してくれというのなら折角だから気になっていたことを聞いてみよう。


 「失礼ですが、ギルドに依頼なぞしなくてもご自分で確認すれば良かったのでは? そこらの冒険者より強そうに見えますよ? 貴方」


 「ふっ……この村でまともに戦えるのは私くらいでな、今はあまり村から離れたくないのだ」


 ……こんな辺鄙なところにある村、盗賊も襲いに来ることはないと思うけどな。まあいいか。


 「そうですか、では行ってまいります」


 「ああ、よろしく頼む」


 というわけで挨拶と依頼の再確認は終わり、件のダンジョンへと調査に向かう事となった。

 西の方に向かいつつ村民に軽く挨拶をして歩く。

 やはり村人に覇気がない。しょぼくれた奴らしかいない。スラムの住民と身なりは大差ないが、まだあっちの方が目がギラギラして覇気があった。

 まあギラついてる奴がいない分、治安はこっちの方が良さそうだが。


 ダンジョンの入り口は町と同じような地下鉄駅風の建物だった。

 そこから入っていくと洞窟のような場所にでる。中身は町にあったダンジョンと少し違うな。

 まずは一層の調査だが登場するモンスターはゴブリン達のようだ。

 ゴブリンはボロボロの服をまとい、錆の浮く粗悪な剣を装備している。

 ダンジョン以外でゴブリンと戦う場合は注意が必要なんだが、ダンジョンでのゴブリンは悲しいくらい雑魚なモンスターだ。

 流石にロックポテトなんかよりは手強いんだが、肉団子を倒せる俺にとっては相手にならない。


 ダンジョン産のモンスターは基本的に知能が低い……というか知能を生かすための経験がないといった方がいいか。

 ゴブリンの脅威度はその知能だ。人間よりは知能は低いとはいえ、簡単な罠を仕掛けてくるし、複数で連携をとってくる。

 自分にとって有利な地形に敵を誘い込むし、不意打ちもしてくる。勝てないと思えば即座に撤退する。

 長じれば魔法を使ってくるゴブリンシャーマンなども出てくる。

 油断すれば一流の戦士でも不覚をとる、危険なモンスターなのである。


 が、ダンジョン産のゴブリンは愚直に正面から襲ってくる。

 ゴブリンの身体能力は成人男性より若干低いくらいだ。正面から戦えば下級冒険者でもやられる事はない。


 というわけでゴブリンの首をスパっと飛ばして終了だ。

 複数で来られたらまずいかもしれないが、ゴブリン達はまばらに出てくるし連携をする様子もない。典型的なダンジョンのゴブリンしかいない。

 ドロップ品は魔石とゴブリンが装備していた錆の浮いた剣やボロボロの布切れだ。

 あんまり嬉しくないドロップ品だな。

 剣は金属製だし潰してインゴットにすればそれなりに使えるが、この貧乏村には鍛冶師もいないし需要がない。商人への伝手もなさそうだし。

 ゴミ一歩手前の布切れの方が需要がありそうだ、とりあえずドロップ品も調査報告に使うから持っていくが。


 ゴブリンを屠りつつ進んでいくと階段が見えてきた、ここを下りれば二層に進めるのかな?

 ダンジョンの層を隔てるものはいろいろある、ここみたいな階段だったり、ワープゾーンだったり、霧を進むと次の層だったり、ダンジョンによって特色があるのが面白い。

 ポピュラーなのはここと同じ階段型だな、ちなみに俺が足繫く通っていた町のダンジョンも階段だった。


 さて、二層のダンジョンのモンスターはっと。

 肉団子か。

 よくある、よくある。ダンジョンに意思があるなら、二層はとりあえず肉団子にしとけって思ってんじゃないかってくらい二層は肉団子がでてくる。

 まあダンジョンを潜る方にとっても肉団子はおいしいしな、色んな意味でな。

 というわけで二層もサクッと攻略していく。


 三層までの確認が任務だったな。

 さてどんなモンスターがいるんだろうなと覗き込んだら、そこにいたのはウッドゴーレムだった。

 ウッドゴーレム……ファンタジーに詳しい人なら字面で想像できるだろう。

 その想像とそう違いはないのがこの世界のウッドゴーレムだ。

 木で出来た巨人、全長は2メートル半程度だ、数字で表すとそこまで大きく感じないが、こいつと正面から対峙する当事者にとっては冗談にならない大きさだ。

 めちゃくちゃ圧迫感がある。実際怖い。

 とはいえ、俺の脳内モンスター図鑑からもってきた情報によれば、そこまで強いモンスターではなさそうだ。

 ほんとか?

 

 とにかく軽く一当たりしてみよう、実際に戦ってみない事には危険度がわからん。

 愛剣のバスタードソードを抜き放ち、胴体へと叩きつける。ガスっと音がして胴体部分から木くずが飛ぶ。

 思ったより脆いな……。

 いや、自分の能力を低く見積もりすぎてるだけか……今の俺はファンタジー世界の住人。現実世界の物理法則は当てはまらない。

 ウッドゴーレムにダメージを与えることはできたが、相手は体が欠けたにもかかわらず怯まず攻撃を仕掛けてくる。

 後ろへ飛び退り攻撃を躱す、この程度のダメージでは倒せないか。

 俺は剣へとオーラを込め再度胴体部へと剣を叩きこむ、光り輝く剣はウッドゴーレムを上下に真っ二つにぶった斬った。


 カラン

 

 ウッドゴーレムが消滅した後にはマジックアイテムと思われる杖と少し大きめの魔石が落ちていた。

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2025年12月29日 00:00

転生したのでフレッシュなゾンビとして生きていく 田中大一文字 @Pageton21

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