第6話
結局だが受けることにした。
なんでこんなクソ依頼を受けるんだ? 自殺志願者かよ? と思うかもしれんが、当然理由はある。
まず、そもそも俺はアンデッドなんで死亡のリスクがほとんどない。
相手に高位のネクロマンサー【死霊術】系統のスキルを持ってるやつでもいない限りどうとでもなる。
それと隠し村というものに興味がある。
場合によってはいろいろと利用できるかもしれない。
自由にできる拠点があると捗るからな。
さて依頼の内容だが、やることは迷宮の規模と出現モンスターの確認だ。
迷宮核の破壊をしても問題なし。
ようは迷宮をぶっ壊しちゃってもいいし、様子だけ探って帰ってきてもいいよって事だ。
迷宮核は破壊すると大幅な魔力の増強を見込めるので、ステップアップを狙う冒険者は破壊したがる。
ちなみに町で管理してる迷宮は迷宮核を壊したら重犯罪者として指名手配される。
そして依頼内容には規模が3層を超えるようなら撤退しても構わないとある。
つまりは2層までの調査はちゃんとしろよって事だな。
出来たばかりの迷宮っぽいので3層以上ある迷宮の可能性は低いってのもある。
依頼内容はこんな感じだった。
依頼主はマリーダという名前らしい。
この世界の命名基準からすると女性っぽいな。
依頼主の住居は迷宮の近くだそうな。
調査の報告はマリーダ氏に直接行うと……ギルドへの報告じゃないとか危険度がさらに上がった気がする。
だまして悪いが……とかありそうだよな。
この依頼を俺が受けた時のギルド職員のしてやったりという顔は忘れられそうもない。
顔に出すなよ……あと俺なんか恨まれるような事したかな? めっさ悪意を感じたんだが……。
まあ、もう依頼を受けちゃったわけだしさっそく依頼の準備へと取り掛かろう。
まず必要なのはキャンプセットだな。
鍋とテントと保存食を10日分……これ以上持っていくのは厳しいな、帰りの分は向こうで何とかするとしよう、最悪食料がなくなっても俺は死なないしな。
念のため使い捨ての結界石(モンスターを近づけなくするモンスターにとって嫌な感じの気配を出すアイテムらしい)を何個か持っていくか。
あとは背負い袋を強化しとくか魔力も増えたことだしそろそろ背負い袋の容量を増やしてもいいころだろう。
というわけで【物質生成】を使って背負い袋の空間を拡張した。
この使い方だと【物質生成】というよりは物質改造って感じだよな。
とりあえず容量が実際の空間の3倍程度まで入るようになった。
ちなみにこういう空間を拡張した入れ物の事をマジックバッグと呼ぶらしい、3倍程度の拡張でも買おうとすれば金貨が必要になってくるそうな。
実際の値段とか市場にどんくらい出回ってるかとかはわからん。底辺冒険者にそんな情報は回ってこないからな。
そんなこんなで準備も終わり翌日の朝には件のダンジョンへと出発することになった。
迷宮の場所はこの町から10日ほど歩いた場所にある。
一応道はあるもののここから先はド辺境。道はぼっこぼっこで酷いことになっている。
この町から東に向かう人ってほぼいないからな。
日本のような亜熱帯に属する気候じゃないので草がぼうぼうってわけじゃないのが唯一の救いだ。
とにかく道沿いに歩く歩く歩く。延々と歩く。
日が落ちるまで歩く。
そして夜に歩くのは危険なので野営をする。
夜危険なのはモンスターが出るとかじゃなくて歩く方向を見失うからだ。
この世界には迷宮の外にもモンスターはいる。
野営するなら普通は見張りが必要だ。なんならモンスターじゃなくても野生の動物に襲われる可能性もある。
熊とか狼とか危険な野生動物はいっぱいいるぞ。この世界の人間は人によっては素手で熊を殴り殺せるが。
俺は睡眠とる必要がないから何とでもなるが、ほかの一人旅をしてる冒険者は野営の時どうしてるんだろうね? 寝てないんか?
まあ、その辺はどうでもいいか……。
そんな感じで夜は焚火をして近づいてくるものがいないか気を付けて昼はとにかく歩いて東へと進んでいった。
そんなことを10日ほど続けていたら、森の中に集落が見えてきた。
ゴブリン(この世界にもゴブリンはいる)の集落ではない人間が暮らしている集落だ。
隠れる気なさそうな隠し村だな。
依頼人はここに住んでいるのだろうか? 第一村人を発見したのでマリーダ氏がここに住んでいるのか確認してみる。
どうやらマリーダ氏はこの村の村長のような存在らしい。
ともかく迷宮の場所も確認したいしマリーダ氏に会ってみよう。
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