第31話 ウォータースライダー
そして、俊哉たちが遊んでいる一方、夢木と、柚葉が遊んでいる場所では。
「それにしても、僕は驚いたよ。まさか俊哉に妹がいたとはね」
そう言った。
彼女自身、俊哉に妹がいたのは知らなかったし、その妹もまた可愛らしいと思った。
「柚葉……お前、まさか妹も狙うんじゃないだろうな」
「何を言ってるのさ、僕は妹の方は狙うつもりは無いよ」
「それは本当か?」
「本当だよ」
柚葉にとって。狙っているのは俊哉ただ一人だけだ。
妹も可愛らしいが、恋愛対象足りえない。
「僕はゆっくり俊哉を誘惑させていくよ。この胸を使って」
「また良からぬことを考えているみたいだな」
「勿論だよ。そのためのプールじゃないか」
そう言って悪戯っぽい笑みを浮かべる柚葉に対し。夢木はまたかと、ため息をついた。
夢木にとって柚葉は可愛らしいいとこであり、妹分だ。
だが、その行いは、是とはいいがたい。いくらなんでも見過ごせない部分があるのだ。
度重なる浮気、そして気になった人は男女問わず落としにかかる性格だ。
従妹じゃなかったら、関わりたくはない。
「もしやりすぎだと感じたら、俺はお前を止めるぞ」
「好きにしてよ。僕は僕の道を歩くから」
柚葉にとって、恋愛はまさしく遊びだ。
他人の感情をコントロールし恋に陥らせる。
それが、彼女の楽しみであり、悦びでもあった。
だが、そんな彼女の誘惑を見事に耐えた男がいた。
見事柚葉の誘惑を耐えきった男が。
俊哉だ。
それを受け、彼女は興奮した。
これは落とし甲斐のある男だと。
今まで彼氏がいる女、彼女がいる漢、大学生の男女、小学生の男女みんな落として来た物だ。
そんな中、耐えきった男がいるということで、柚葉は興奮しているのだ。
「次はどんな手を使おうかな」
考えるだけで楽しいのだ。
既になん十個も俊哉を落とす作戦は考えついているのだ。
★★★★★
「結構並ぶな」
そう俺は呟いた。
夢葉、穂乃果と一緒にウォータースライダーの列に並んだのはいいが、中々前に進まない。
まだまだ滑り台の入り口まで距離がある。後十組以上は並んでいそうだ。
「やっぱり並んでるのですね」
「ああ、そうだな」
「まさかここまで並んでいるとは思ってなかったであります」
このままだと、順番が来る前に、俺たちが待ちくたびれてしまう。
「まあでも話をしながら、待つのです」
「そうだな」
確かに、この時間を有意義に過ごせれば待ち時間も苦ではない。
それに当然のことながらここにはスマホもなければ漫画もない。
敢えてある程度の娯楽が奪われているがゆえに、談笑に集中することが出来る。
「そう言えばだが、穂乃果は夢葉の姉妹をどう思った?」
少なくとも、穂乃果は動揺してたような感じがした。
「それ私も気になるのです」
そう、手を上げながら上機嫌で夢葉が言う。
「なんだか、本音を言ったら怒られそうであります」
なるほど、少なくとも、変な感じだったのは間違いないってことか。
「私は何と言われても怒らないのです。だって、お姉ちゃんも、柚葉も変人なのですから」
「夢葉ちゃんがそれを言うのでありますか」
まあ、夢葉自体も、ドライではあるからな。
「じゃあ分かったであります。話すであります。夢木さんは、なんだか怖かったであります。一人称俺でしたし、なんだか初対面から距離が近かったでありますし。
柚葉さんは、なんだか、仲良くなれそうな感じはしたであります」
まさかの柚葉の方に愛着がわいたのかよ。
まあでも確かに、あいつはあいつで女子にもモテモテらしいから気持ちは分かる。が、
「あまり仲良くなるのはおすすめしないぞ」
俺自身、あの女の嫌なところはよく知っている。
夢葉の従妹じゃなかったら、もう会いたくないところだ。
まあ、勿論夢葉の従妹でも、あまりかかわりたくはないが
夢葉もそれにうんうんと、頷き、
「私も人の従妹の事を悪く言われていい気がしないのですけど、こればかりは俊哉君に同意なのです。あの子は気に入った子を見境なく襲う悪癖があるのですから」
「それ、もし私が気に入られてたら、襲われるという事であります?」
「可能性はある」
「それは嫌でありますね」
「それで、今狙われてるのが、俊哉君なのです」
そう言って夢葉は俺の手をグイっと引っ張る。
「お兄ちゃんがでありますか?」
「ああ、普通に狙われてる」
「それは嫌でありますね。だから昨日……」
「そう言う事だ」
穂乃果に同じ思いはしてほしくないからな。
「さて、そろそろ順番だな」
暫く話しているといよいよ順番だ。
次俺たちがウォータースライダーを滑ることが出来る。
「誰から滑る?」
「私が最初に滑りたいであります!!」
そう笑顔で言う穂乃果。
「じゃあ、私その次貰っていいですか?」
「ああ、じゃあ俺が最後だな」
無事揉めずに順番が決まった。
そして早速穂乃果が座った。
「行くでありますよ!!」
そう笑顔で言った穂乃果は一気に下へと滑っていく。
「ひゃああああああ」と言って滑っていく穂乃果。
なんだか楽しそうだ。
「夢葉は怖いか?」
「いえ、楽しみなのです」
「そうだったな」
俺も夢葉もジェットコースターは好きだもんな。
「でも、背中をしてほしいのです。一気に押し出してほしいのです」
「分かった」
そう言って俺は夢葉の背中を一気に押す!!!
「わああああああ、なのですー!!!!」
そう言って夢葉の姿はすぐに見えなくなった。
だが、少なくとも楽しそうだ。
そして最後に残された俺も、滑り出す。
色々と曲がりが会ったりして楽しい。
最高だ。
「ふう、お待たせ」
俺がそう言うと、二人が手を振り返した。
だが、その後ろに夢木さんと、柚葉がいた。
「実は俺たちもウォータースライダー滑ってたんだ」
「そうだよ。僕は後ろに俊哉君がいるなーって見てたんだ」
「そうか」
なんか怖いな。
先程の会話は効かれてないよな?
少しだけ怖くなってきた。
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