第30話 水着
そしてプール場に着くと、そこには夢葉たちが待ち受けていた。
「おう、俊哉来たか。それがお前の妹か?」
「はい、そうです」
俺の妹と、二人が会うのは初めてのはずだ。
「俺は、夢木だ。よろしく」
「よ、よろしくであります?」
混乱しているようだ。
そう言えば穂乃果には夢木さんや柚葉のことはほとんど行ってなかった。
そりゃ、急に俺っ子が来たらびっくりするよな。
いや、であります系がびっくりする側なのか、という気持ちはあるが。
そして問題はここからだ。
「僕は柚葉だよ、よろしくね」
そう、王子様笑顔で柚葉が言う。正直胡散臭い。
信用に値しない笑顔だ。
俺はこいつの本性を知っているから。
「僕っ子でありますか?」
そう言って、穂乃果は、夢葉の方をちらっと見る。少しばかり不安に思ってるんだろう。
「大丈夫なのです。皆一癖も二癖もありますが、基本的にはいい人なのです」
「それをお前が言うか、夢葉。俺的にはお前の方が癖あると思うけどな」
そう、夢木さんがいい、
「ていうか、僕的には基本的にはが気になるんだけど」
そう、柚葉が言う。
「柚葉の場合は、基本的にいい人じゃないのです」
「あ、下方修正した」
「仕方ないのです」
まあ、柚葉は基本セクハラの鬼だからな。
そして、一通り挨拶が済んだところで早速中に入っていく。
穂乃果はぼそぼそと、「よくわからないであります」と、言っていたが。
穂乃果にとっていきなりお三方とご対面はハードルが高かったか。
そして早速中に入り、いろいろな手続きをした後、
「じゃあ、早速分かれなのです」
そう、夢葉が言う。
更衣室には当然のことながら男女一緒には入れない。
だから着替えの間は暫く女子勢とは離れることになる。
というか、この中に男子は俺しかいない。
となれば、寂しいことになるな。
一人で着替えることになるし。
「俊哉君、本当に水着楽しみにしていて欲しいのであります」
そう、もじもじしながら言う夢葉。
可愛くて抱きしめたくなる。
だが、抱きしめるとしても、抱きしめるのは、プールに入った後、夢葉が水着に着替えた後だ。
「ああ、楽しみにしてるよ」
そう言って俺は中へと入っていく。
更衣室の中は暇だ。一人だから、話す相手もいないし。
だからこそ、俺は急いで服を脱ぎ、水着に着替える。
そりゃ、暇だからな。
★★★★★
「さて、プール楽しみだな」
そう言って服を脱ぎ始める夢木お姉ちゃん。うぅ、やっぱり巨乳なのです。
「そうだねえ」
そう言って服を脱ぐ柚葉もやっぱり巨乳で、
「楽しみであります」
そう言う穂乃果ちゃんも巨乳なのです。
分かっていたこと。そう、分かっていた事なのです。
でも、やっぱりみんな巨乳なのです。
三人の巨乳に囲まれた今、正直自身の貧乳が若干ながら、恥ずかしくなるのです。
よくよく考えたら、プールに入ったらきっと三人の胸が周りの目を引くのです。
そうなれば、きっと一人だけ貧乳がいるぞなどと、馬鹿にされるのです。
いやでも、よくよく考えたら。
私は俊哉君が可愛いと言ってくる顔がありますし、そもそも俊哉君がいればいいのです。
別に気にする必要なんてないのです。私は自由にやればいいのですよ。
そう決めたのです。
それに、私はあくまでも俊哉君とのデートのつもりで今日来たのですから。
★★★★★
そして、速攻で着替えて、プールの中へと入っていく。
まだ四人は来ていないようだった。
まあ、無理もないだろう。女子はおそらく男子よりも着替えに時間がかかる。
なら、俺よりも時間がかかるのは、当然の事だ。
そして、待っている間、ボールを膨らませる。
後でボールを投げ合ったりするかもしれないからな。
するとすぐに、四人が来た。
「お待たせなのです」
四人ともそれぞれ可愛らしい水着を身にまとっている。が、その中で一番目立っているのは、夢葉だ。
無論、四人の中で一番胸が小さいのは、夢葉だが、それと同様に一番水着が似合っているのは夢葉だ。
何しろ、夢葉のスタイルに一番似合っているのだ。
「どうなのです?」
そう、夢葉が訊く。
勿論答えなんて決まっている。
「とてつもなく似合っている。祖の水着、夢葉のイメージにピッタリハマりすぎて、驚いたよ。なんだか見違えたようだよ。……最高だ、夢葉」
俺がそう言うと、夢葉はぴょんぴょんと飛び跳ね、一気に俺のもとに来た。
「俊哉君も最高なのです!!」
そう言って夢葉も俺に抱き着いてきた。
ああ、最高だ。
さっきからずっと抱きしめたかったんだ。
「イチャイチャするなよ、僕の前で。そんなことされたら、無理やりにでも奪いたくなるじゃないか」
柚葉がこちらに向かってくる。
早速セクハラモードかよ。
あの巨乳で、俺を虜にさせようとでもしてるんじゃねえだろうな。
とはいえ、あそこまで大きい胸は、俺的には好まない。何しろ、目のやり場に困ってしまうからだ。
それに僕っ子って、ふつう胸が小さいはずだろ。
「夢木さん、柚葉を止めてくれ」
「ああ、分かった」
そう言った途端、夢木さんが柚葉の肩を掴んだ。
良かった。
「お前はこっちだ」
「ああー、何をするのさ」
ふう、助かった。
そして、俺はそのまま夢葉と、穂乃果を連れ、プールに向かった。
「これ、良かったでありますか?」
「いいのです。柚葉はもういいのです」
夢葉が起こっている。よほど、あの柚葉の行いは売る瀬なかったんだろうな。
「俊哉君は私の物なのです」
あ、嬉しい。
「ああ、夢葉は俺のものだ」
「二人ともやっぱり昨日絶対何かあったのであります」
そう訝しげに見る穂乃果。
これ以上追及されたくないのか、夢葉は早速、「プールに入るのです」と、言い放った。
★★★★★
俊哉君とプールに入るのです。
「俊哉君は泳ぐの得意なのです?」
「俺は小学生の時、スイミングスクールに通ってたから泳げるぞ」
「知ってるのです。俊哉君は、泳ぐの得意だったのです」
小学生の時のプールの時間。俊哉君は一人、他の男子たちの中で三番目くらいの泳ぎをしてたのです。
私はその泳ぎにも憧れたのです。
対して私は、あまり泳げなかったのですから。
私はただ、うまい泳ぎをする俊哉君を、端で見てただけなのですけど、いつか一緒に泳ぎたいと、少しだけ泳ぎの練習をしたのです。
俊哉君ほどうまくなったとは思えないのですけど、できるなら、俊哉君に食らいつけるほどの泳ぎを披露したいのです。
「俊哉君。私は負けないのです。競争するのです」
「ああ、分かったよ」
「私も仲間に入れるであります」
「穂乃果ちゃんは泳げるのですか?」
「まあまあ泳げるであります」
「なら、穂乃果ちゃんとも競争なのです!!」
ここで、私の強さを見せたいのです。そのためには、まず穂乃果ちゃんには負けられないのです。
昨日の件から、流石に俊哉君は私から離れないと思っているのです。
でも、やっぱり女として、自分の彼氏にいいところは見せたい物なのです。
「じゃあ、行くか」
「はい! なのです」
「負けないであります」
そして私たちは一気にスタートしたのです。
「んぐっ」
俊哉君はやっぱり早いのです。早速、私を抜かして言っているのです。
私も頑張ってはいるのですけど、中々距離は縮まらなくなってきたのです。
そして、私と穂乃果ちゃんは互角なのです。
ここで思うのは、やっぱり穂乃果ちゃんには負けたくない、ではないのです。
俊哉君には負けたくないが、今の気持ちなのです。
このままでは、負けてしまうのです。
だからこそ、全力を出すのです。絶対に負けたくないのですから。
えいと、足で水を蹴る速度を速めるのです。
その速度で、一気に俊哉君に追いつこうと思っているのです。
でも、俊哉君との距離が中々縮まらない。いや、むしろ遠ざかっているのです。
追いつこうとしても、永遠に追いつけない。
悔しい。
悔しくてたまらないのです。
そして、結局先に俊哉君は、25メートルプールの端についてしまったのです。
しかも、穂乃果ちゃんの方が私よりも先についてしまったのです。
つまり私は無念の最下位なのです。
「ん、悔しい!! のです」
まさかここまで勝ち切れないとは。
俊哉君恐るべしなのです。
しかも、私が最下位なのが一番悔しいのです。
「悔しいのです」
思わずもう一回そう言ったのです。
すると俊哉君は、
「夢葉も結構早かったんじゃないか?」
と言ってくれたのです。嬉しいは嬉しいのですが……。
「でも、最下位なのです」
慰められたとしても、最下位という結果は変わらないのです。
「大丈夫だ。穂乃果もスイミングスクールに通ってたから」
「あ、そうなのですか」
いやでも、だからと言って負けたくはなかったのです。
「また今度リベンジしたいのです」
私は二人に向かってそう言い切ったのです。
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