第24話 父と彼女
「それで、君は小学生の時から俊哉のことを知っていたという訳か」
純也がそう言うと、夢葉はただ頷いた。
「なるほどな。しかし本当にうれしいよ。息子に彼女が出来るなんてな」
「むしろこちらこそ、俊哉君を生んでくれてありがとうなのです」
本当にありがたいと思っている。
夢葉にとって、俊哉という存在は、世界で一番大事だ。
彼がいなかったら、今まで生きて来れて中っtかもしれない。
彼は小学校の時は、陰ながら夢葉のことを守ってくれ、今は彼氏として守ってくれている。
夢葉は、少し、神のkを触る。彼女の青い髪の毛。それは生まれつきではない。自身で染めたものだ。姉である、夢木が染めてたからというのもあるが、一番は小説のキャラに憧れたからだ。
だからこそ、遊園地の時に、馬鹿にされたのには腹が立った。だが、俊哉が守ってくれた。彼氏として。その感謝の気持ちは言葉で言い表せないほど大きなものだった。
「そうか、礼儀正しい子だな。生んだのは僕じゃないけど」
「俊哉君のお母さまですよね……亡くなったと聞いているのですけど」
「ああ、あいつは死んだ。数年前にな」
そう、俊也が言った。それを聞き、夢葉はぎゅっと唇に力を入れた。
いけない事を聞いてしまったかもしれない。
場を暗くしないように決めているはずなのに。
「勿論もう立ち直っている。そんな顔をしなくても大丈夫だ。ただ、挨拶くらいは後でしていくと良い。それで、将来的に決婚とかは考えているのか」
「え?」
夢葉はその言葉を聞き、見るからに固まった。手を膝の上に置いたまま。
自分は、俊哉と一緒に入れるだけで幸せだ。そこまでしか考えていなかった。
将来の事なんて何も……。
「参考までに言っただけだよ。高校生のうちに結婚とか考えているとは思ってないから。高校生の恋愛は、お遊びと言ったら言葉は悪いが、結婚とかを考えずに男女で遊べる時期だと思っているから」
「……私は俊哉君と結婚はよくは分かってはいないのですけど、でも、将来的に結婚は視野に入れてはいるのです。だって、俊哉君との生活は楽しそうなのですから」
視野に入れている。それは嘘だ。今考えた。
だが、俊哉と一緒に共同生活をし、子育てをする。それも楽しそうだと、今思った。
その時まで、俊哉が一緒にいてくれるかどうかは分からないが、一緒にいてくれるのなら、そんな幸せな事は他にはないだろう。
それにだ、今はライバルが多すぎる。もし結婚出来たら独占できるという点も利点だ。
「そうか。そう言えば今日は俊哉と泊まるつもりで来たんだろ? 僕たちはお邪魔だったのおかな」
「いえ、そんなことはありません私は俊哉君と一緒の部屋で練れたらいいのですから」
それに、せっかくの家族の感動の再会の場に土足で踏み込んでいる形になっている。本来なら夢葉が謝らなければならない状況だ。
「なら、穂乃果には部屋に立ち入らないように言わないとな」
「そうですね。なんか、俊哉君へのライバルが増えたみたいでいやなのですけど、穂乃果ちゃんとは少し話してみたいのです。……結構似てると思うのですから」
それを聞いて、純也は納得のそぶりで、頷いた。
勿論、なぜなんだなんて野暮なことは、純也も聞かないが。
夢葉にとって、穂乃果は他人という感じがしない。
家族でこそないが、そtrに似たものを感じる。
波長でもいうのだろうか、それがあっているのだ。
★★★★★
「だからこちょこちょやめてくれ」
俺は穂乃果に対して決死の抵抗をする。
こちょばくて、もうたまらない。
いい加減に開放してくれないと、こちょば死してしまう。
こちょば死とは何だと思うかもしれないが、こちょこちょをされすぎると、死に至るとか何とかを聞いたことがある。
もう限界だ。本当に死んでしまう。
ガチャリ
その時、ドアの開く音がした。
「夢葉……」
救いの神がやって来た。
助けてくれ。このままでは本当に死んでしまう。
「俊哉君いちゃついているのです」
へ?
なんだって?
「なんかムカつくのです。私という物がありながら」
あれ、これは嫉妬されてる?
こっちとしては、楽しいこともなく、ただ拷問されてるだけなんだが。
「そんなことはいいから助けてくれ、このままだと死んじゃう」
「もっと苦しんでもいいと思うのです」
完全に嫉妬してるわ。
恐らく、父さんと大事な話でもしてきてたんだろうか。
だからこそ、その間にこんなことになってるのを見て、俺が許せないのか。
気持ちは分かるが、今はそんな時じゃない。
とにかく苦しいのだ、
「本当に穂乃果を止めてくれ」
「こちょこちょであります」
「ははは、仲がいいなあ」
「父さん、そんなことを言ってないで早く!!!」
今は父さんが一番頼りになる。
父さんが助けてくれなかったら、もう終わりだ。
「はいはい。分かったよ。……穂乃果」父さんが穂乃果の手を掴む。
「そろそろやめてあげなさい」
「だって、兄様が昔の話をあまりしてくれないのでありますから」
「そうなのかい?」
「いや、俺はただありのままを話したら、そこまでエピソードがないわけがないと言われたから」
「そうか、穂乃果も疲れてるんだろう。寝転ぶかしてゆっくりするがいい」
「……はーい、であります」
そう言って穂乃果は自身の部屋に行った。
三年間使われていない、穂乃果の部屋に。
「……夢葉」
「やっぱり俊哉君の妹であろうと、イチャイチャしてるのは許せないのです。私が俊哉君とイチャイチャしたいのです」
そう、恥じらいながら言う夢葉。その顔が維持らしくてかわいい。
「ああ、イチャイチャしよう」
そう言って邪魔もののいない俺の部屋に連れていく。
「そう言えば夢葉は俺の部屋には行ったことないよな」
「ええ、初めてなのです」
「ならきっと楽しいぞ」
そして俺も、夢葉を連れ、部屋に向かう。
その際に、父さんのにやついた顔が見えた。きっと、イチャイチャしようと言ったからだろう。
少しだけムカつく。
そして、俺のベッドに夢葉が座った。
「どうぞなのです」
そう言って俺のベッドをトントンと叩く夢葉。
「お前が言うなよ」
「そうは言っても、私はずっと俊哉君と一緒に居たかったのです。だからこそ、野望がかなって嬉しいのです」
「野望だったの?」
「ハイなのです」
先程も、二人でいたと思うのだが。
しかし、コの場合は、俺の家族といったん離れて、俺と夢葉の二人でのデートを下かったという事だろう。
色々あって疲れているだろうし。
「俊哉君。妹さんとは仲がいいのですか?」
「ああ、いいぞ。でも、夢葉ほどではないな」
「そう言ってもらえてうれしいのです」
そう言って顔を赤らめた夢葉。
「一緒に寝転がるのです」
「そうだな」
そして俺たちはベッドに寝転がる。
なんだか、ムードを感じる。
「なあ、夢葉」
「どうしたのです?」
「今日はこのまま昼寝するか? イチャイチャしながら」
正直もう眠たい。今日は色々な事があって、疲れた。
もし、夢葉がイチャイチャしたいというなら、それに従うつもりだが。
「気が合うのです。私も疲れたのです」
そう言って夢葉は俺の手を掴んでくる。
「ふふ、今日はもう離さないのです」
そう言って夢葉は枕の上に頭を乗せた。
ふう、ベッドが広くてよかった。おかげで、二人ぎりぎり寝れる。
「寝心地はどうだ?」
「気持ちがいいのです。布団が柔らかいのです」
「そうだな」
確かに言われてみれば、布団が柔らかい。今まで考えたことが無かった。
「ところで、今日は泊まるでいいのですよね?」
「ああ」
すでにその前提で話
が進んでいると思っていたが。
「その時、私脱いだ方が良いのでしょうか」
脱ぐ。そうか、一緒に寝るとなればそうなるのか。
一世に寝るというのは、普通の意味と、少し大人の階段を上るという両方の意味があるからな。
「まだキスもまだなのに、早すぎるだろ」
「それも、そうなのですけど、少し不安なのです」
「不安?」
「やっぱり、取られそうで」
「何度でもいうけど、俺が好きなのはお前だけだ」
「ありがとうなのです。だからこそ、愛を伝えたいという事なのです。……胸が小さいのですけど、胸揉むのです?」
「なんでそこに帰着するんだよ」
とは言っても、今の夢葉の顔は赤くなっている。
無理しすぎだ。
夢葉は自身胸を揉まれて興奮するような太刀の人間じゃないと思っている、
その相手が俺だったとしても。
勿論そんな経験はないし、俺には胸は貧乳どころか、無いのだから、そんな感覚を覚えることは一生ないだろう。
だけど、一つだけ。夢葉の好む、恋愛関係というのは、シンプルな、友達関係の延長戦だと思っている。
その中で、イチャイチャを少しずつ取り入れていく。
俺には、何度でもいうが、一緒にお風呂に入ったり、互いに裸になって共に寝るのは段階が早すぎると思っている。
「夢葉、別に無理しなくていいからな。泊りだからって恋人同士の音をする人用はないからな。だた、二人で野球が見れたら幸せだ」
「はい、なのです。……そう言えばそろそろ野球が始まるのです」
今は17時24分だ。
「そろそろスタメンが公示されるのです」
「ん、そんな時間か」
「最近田中選手が、23打席連続無安打なので、そこをどうするのかが気になるのです」
「そこか」
「そこなのです。今の田中選手を使うなら、二軍から上がって来た宇和田英雄選手を使って欲しいのです」
宇和田選手か。
「二軍でどれだけ売ってたんだっけ」
「三割二分七厘、七本塁打、OPS0.872なのです」
中々の好成績のようだな。
「まだ二十四歳の若手なので楽しみなのです」
どうやら、夢葉の意識を裸で寝る事から遠ざけることに成功したようだな。
「スタメン発表見たら寝るのです」
そう言って、夢葉は野球速報アプリを手に持ちながら、その瞬間を待つ。そしてその2分後、スタメンが発表された。
「田中選手じゃなくて、宇田川選手が外れているのです」
そう、夢葉は怒りに満ちた声で言う。
「最近あまり打ててなかったのですけど、二割は打ってたのです。だから外すなら選手のはずなのです」
段々と声が低くなってくる。なんだか、少しだけ怖い。
「ふう、でも、大丈夫なのです。守備に不安がある宇和田選手をいきなり守備に就かせるのは怖かっただけなのでしょう。監督を信じるのです」
流石の切り替えだ。一瞬で納得したようだ。
「でも、宇田川選手が見たかったのです」
完全には立ち直れていないようだ。
そして、スタメンを見た俺たちはゆっくりと眠りについた。
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