第18話 テスト

 そしてついにテスト当日になった。あの日からずっと夢葉と一緒に勉強し続けた。その成果をいつ出すか?

 愚問すぎる。今しかないだろ。


 俺にとっては将来の受験なんかよりも、このテストが大事なんだ。


 正直今まではテストが来てほしくないという気持ちでいっぱいだった。だが、今はワクワクが止まらない。この勉強の成果をついに出せるのだ。


 テスト用紙が配られる。ついにテストが始まる。夢葉も裏返しになっているテスト用紙の前で、集中しているようだ。

 ……テストが始まる前に夢葉が言っていた言葉を思い出す。


『テストは解けないと思ってても、最後まで集中するのです。そしたら思わぬところから記憶が呼び起こされるのですから』


 確かに、急に思い出すこともある。例えば、アニメキャラの名前とか、すぐに忘れてしまうが、思い出そうと粘っていたら、スマホで検索すること無く、無事に出てくる。あれと同じだろう。


 さて、夢葉と同じように俺も集中しないとな。


 最初は理科だ。夢葉との勉強の日々を思い出す。今となれば、あのスパルタの日々もいい思い出だ。


 ……なんか、結構イチャイチャしてたような。

 まあ、気のせいだろう。

 どっちにしろ、勉強はできるようになっているはずだ。

 とはいえ、思い出されるのがイチャイチャした記憶ばかりで、少し怖くなる。記憶の中では。添い寝をしたことや、お疲れ様のなでなでをしてもらえたことなどが思い出の大多数だ。

 いや、きっとこれは、辛い思い出よりも楽しい思い出の方が沢山出てくるように俺が無意識につらい記憶を消去しているだけだろう。



 そして問題を開く。その瞬間俺はテストに集中した。

 うん、前までよりもはるかに溶ける。これなら、赤点はやはりありえないだろう。

 勿論心配なのは理科なんかよりも数学なのだが。


 そしてそんなテストシーズンもあっという間に胃時間が過ぎていく。

 主にテストを受け、学校終わりには夢葉の家に行き、勉強とイチャイチャをする日々だ。

 テストシーズン中の方が勉強のやらなきゃならないことがはっきりしていて、勉強に熱が入った。

 勿論イチャイチャもしてたが。

 そして、


「はあ、テスト終わったー!!!」


 テストがすべて滞りなく終わった。


 これで自由だ。勉強から解放される。

 それと同時に夢葉とも沢山出かけることが出来る。そう思ったら気持ちが明るくなった。


「それで、俊哉君、手ごたえはいかがなのです?」


 夢葉がそう聞いた。


「全部赤点はないと思う」


 それくらい手ごたえがあった。苦手な数学でさえも。もしこれで、赤点だったら、凡ミスが多かったという事なのだろう。

 だが、それは、そんなのありえないと俺は思っている。もしこれでダメだったら、俺は絶望してしまう。


「それはよかったのです。勉強の甲斐があったのです」

「本当にそうだな」


 勉強の日々はイチャイチャの記憶が大部分を占めるとはいえ、十分に苦痛の日々ではあった。夢葉とのイチャイチャが無かったら確実に耐えられなかった。

 だが、勉強はやってよかったと本当に思っている。テスト後に、テスト返しの日が心配だあなんてことにならないし。


「今は、テスト返しの日が気になるよ。……そう言えば夢葉はどんな感じだったんだ?」


 今はテスト返しの日が楽しみだ。



「私は完ぺきなのですよ。恐らく全教科で九十点は取れていたのです」


 やはり化け物すぎる。俺も今回今までで一番できたとはいえ、九十点は無理だろうと思っているのに。


「テスト返しで私のすごさを見せつけてやるのですよ」


 そう、息巻く夢葉。


「安心しろ。俺は絶対驚かされる」


 というかそれ以外の未来が見えない。

 それに、中間試験。そこで、十分話題になっていたし。




 そしてあっという間に訪れたテスト返却日。

 俺の答案用紙が返って来る。赤点はないだろうと思ってても、やっぱり心配になってしまう。

 今考えたら、あの式間違っていたかもしれないとか、いらない不安に絡まれてしまう。

 とりあえず赤点はないはずなのだから、さっさと答案を受け取って不安から解放されたい。


 そして、一教科ずつ、採点された答案用紙を受け取っていく。

 そのたびにほっとする。だが、まだ夢葉と店愛っこはしない。まあ、鮎川さんの反応で何となくわかってしまってるが、聞かないふりをする。夢葉との答案見せ合いは、夢葉の家でやろうという事になっているのだ。

 というのも、元々そう言う習慣になっているらしい。

 だから俺もその中に入れてもらおうという訳だ。


 そして、全部の答案用紙を受け取った。よし、全部赤点回避出来てる。

 これで安心だ。


 そして、テスト返しと、軽い終業式が終わったので、夢葉のところへ行く。

 これで今日の行事は終了だ。


「じゃあ、早速家に行くのです!」


 そう、夢葉が元気よく言った。


「そう言えば夢木さんはどれくらい勉強できるんだ?」

「結構できるのです。ああ見えて」

「ああ見えてって」


 確かにそうだけどよ。


「まあ、自慢のお姉ちゃんなのですよ。存在がセクハラすぎるのですけど」


 なんか段々と夢葉の夢木さんに対するあたりが段々と強くなってきている感じがする。


 まあ、無理もないか。夢葉が若干胸の大きさにコンプレックスがあるのもきっと、夢木さんのせいなのだろうから。

 それにあの人あれ以来も結構、そろそろエッチはしたかと聞いてくるし。

 ちなみに、和真さんに訊いたところしたことは無いらしい。勿論キスもだ。

 むしろ俺たちはカップルじゃねえと、怒られてしまった。


 あの人は自分はないのに、俺たちに求めてくるんだよな。

 自分たちはカップルですらないのに。

 まあ、それは関係ないが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る